全量基肥肥料を用いたカキ「富有」の窒素施用量削減


[要約]
カキ「富有」用に、年1回の施用を可能にする被覆尿素肥料を主成分とする全量基肥肥料を開発した。この肥料を用い、慣行の年間窒素施用量の25〜40%削減にあたる15s/10aを3月初めに1回施用することで、慣行施肥と同等の収量・品質が確保できる。

[キーワード]カキ「富有」、全量基肥肥料、減肥

[担当]愛知農総試・園芸研究部・落葉果樹グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・果樹、関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
カキの施肥は、窒素成分で年間合計20〜25s/10aを12〜1月、6月、10〜11月の年3回に分けて施用している。そのため、施肥時期が夏期の枝梢管理や収穫と重なり、作業が集中する。また養分吸収と肥効時期が異なることから環境への負荷も懸念されている。
 そこで、カキの養分吸収特性に合致した肥効を示す全量基肥肥料を開発し、施肥量の削減と施肥作業の省力化を図る。

[成果の内容・特徴]
1. カキ「富有」の施肥の合理化を図るため、数種の被覆尿素肥料と無機、有機肥料を配合した全量基肥肥料を開発した。本肥料の成分は N:15% -P2O5: 8% -K2O: 13% で、含有する窒素成分の内容はリニア溶出型被覆尿素のLP30:33%、同じくLP70:36%、シグモイド溶出型被覆尿素のLPS40:10%、速効性無機窒素:14%、有機窒素:7%である。この肥料で、年間窒素施用量で慣行の25〜40%削減にあたる15s/10aを年1回、3月初めに全量施用する。
2. 全量基肥肥料施用区の土壌中の無機態窒素は、季節的な変動が慣行区と比較して少ない。またカキの窒素吸収量の多い6月から9月に、全量基肥肥料施用区の硝酸態窒素含量が多い(図1)。
3. 葉中の窒素含量は、年次により生育初期に差がみられるが、栄養診断時期である8月上旬以降慣行と差がなく、年間の窒素施用量を慣行より25〜40%削減しても差がない(図2)。
4. .次年度の初期生育に影響するとされている休眠期の細根中の窒素含量は11月の土壌中の無機態窒素濃度の影響を受けて慣行区に比べ少ないが、最も影響するとされている結果母枝中の窒素含量は慣行区と差がない(表1)。
5. .次年度の初期生育に影響するとされている休眠期の細根中の窒素含量は11月の土壌中の無機態窒素濃度の影響を受けて慣行区に比べ少ないが、最も影響するとされている結果母枝中の窒素含量は慣行区と差がない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 施肥時期が遅れると適期に肥効を示さないので、3月初めに施用する。
2. 全量基肥肥料からの安定した肥効を得るために、施肥後土壌と混和する。
3. 全量基肥肥料の窒素溶出は、気温や降水量の影響を受けるので、降水量が少ないときや乾燥したときは適宜かん水を行う。
4. 本配合肥料の実用化に当たって、「次郎」における現場実証を開始の予定である。販売に当たってはJAあいち経済連において製造し県内農家への販売を計画中である。

[具体的データ]
図1 土壌中の無機態窒素含量の季節的推移(2008年) 表1 結果母枝および細根中の窒素含量(%)
図2 葉中窒素含量の季節的変化(左:2007年、右:2008年)
表2 施肥法が収量、果実の重さおよび果実品質に及ぼす影響
[その他]
研究課題名:ミカン、ナシ及びカキに適した新規肥効調節型肥料の開発
予算区分: 県単(産学官共同研究)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者: 加藤実、眞子伸生、加藤周平、成田秋義、岩田久史(JAあいち経済連)

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