ニホンナシ「幸水」ハウス栽培の省エネルギー温度管理技術


[要約]
ニホンナシ「幸水」のハウス栽培では、最低気温設定を加温開始から15℃一定で管理するより、10℃で加温開始し満開から40日の期間だけ15℃にすることにより、40%以上燃料消費量を削減でき、かつ、満開日から収穫日までの日数を短縮することができる。

[キーワード]ニホンナシ、幸水、ハウス栽培、温度管理、省エネルギー

[担当]三重農研・園芸研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ニホンナシ「幸水」のハウス栽培は早期出荷による作期分散を目的に行われているが、近年は燃料等の高騰により収益性が低下している。そのため、収穫期を遅らせず燃料消費量を抑えながら品質の高い果実を生産する技術の確立が求められる。そこで、温度管理が燃料消費量と「幸水」の開花期、収穫期および果実品質に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 2月12日(DVI2.0時)に達した加温開始時から最低気温の設定を15℃一定で管理するのと比較して、10℃設定で加温を開始し、満開から40日間を15℃で管理(以下「変温」とする)した場合の燃料消費量は、2月12日加温開始で約40%、2月21日(DVI2.2時)加温開始では約50%削減される(表1)。
2. 燃料消費量は外気温が低い時期に多く、この時期に低い温度設定をすることが燃料消費量の削減につながる(図1)。
3. 2月12日から加温、15℃一定で管理するのと比較し、同日から加温の変温では満開日が3〜4日遅れるのに対し、収穫盛日の遅れは0〜2日となる。2月21日から加温した変温では満開日が7〜9日遅れるのに対し、収穫盛日の遅れは2〜3日となる。変温は満開から収穫盛期までの日数が短かくなる(表2)。
4. 15℃一定と比較して変温の果実品質はほぼ同等である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. ハウス栽培「幸水」の省エネルギーと促成栽培を両立する温度管理のための技術資料となる。
2. DVIは杉浦ら(1997)に従い、三重県ではアメダスポイント「津」のデータにより農業研究所および中央農業改良普及センターで算出し、情報提供している。DVIが所定の値に達する日は地域やその年の気象条件により前後する。
3. 早期に加温開始すると低温遭遇時間により開花、発芽が不揃いになる場合があるので注意する。本試験はDVI2.0以降の加温開始により検討を行っている。

[具体的データ]
表1 最低温度の設定が燃料削減率に及ぼす影響 図1 最低気温の設定の違いが燃料消費量の違いに及ぼす影響
表2 異なる温度条件で栽培されたハウス栽培
表3 最低温度の設定の違いがハウス栽培「幸水」の収穫盛期の果実品質に及ぼす影響
[その他]
研究課題名:東海地域における原油価格高騰対応施設園芸技術の開発他
予算区分:実用技術
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:西川豊、大野秀一、三井友宏、田口裕美

目次へ戻る