水田転換畑におけるJM7台木「ふじ」の開園時の排水性改善技術


[要約]
JM7台木「ふじ」は一旦根が湛水しても24時間以内に排水されれば生育への影響が少ない。苗木を定植する前に水田転換畑の難透水層を破砕処理することで、根が分布している地下30cmまでの排水性が改善され、湿害による生育不良を防ぐことができる。

[キーワード]水田転換畑、リンゴ、「ふじ」、JM7台木、開園、排水性改善

[担当]富山農総技セ・果樹研究センター
[代表連絡先]電話:0765-22-0185
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年富山県内では、主穀作経営の安定化のために果樹を取り入れた複合経営が増加しているが、水田転換畑に植栽したリンゴでは園地の湿害による生育不良が問題となっている。そこで、水田転換畑でのリンゴ栽培の定着を図るため、JM7台木「ふじ」に必要な排水条件を明らかにし、水田転換畑における開園時の排水性改善技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. JM7台木「ふじ」2年生樹は根が一旦湛水しても24時間以内に排水されれば、生育への影響は少ない(表1)。
2. JM7台木「ふじ」の2〜5年生樹は生根重の98%以上が地下30pまでに分布している(データ略)。
3. 排水性の改善は水田転換畑の鋤床層や粘土質層等の難透水層を、リンゴの定植予定位置に沿って列状に重機を使い排水性の良い土層まで掘り下げて破砕処理する(図1)。掘り上げた土壌は砕いて埋め戻し整地する。
4. 難透水層を破砕処理した水田転換畑では排水性が改善し、梅雨時期の多雨によって地表面まで地下水位が上昇した場合でも、24時間以内に地下30cmまで地下水位が下がる。また、排水性は年の経過に伴い向上する(図2)。
5. 難透水層を破砕処理し定植したJM7台木「ふじ」2年生樹は、破砕していない水田転換畑に定植した樹と比較し、主幹延長枝長が長く新梢乾物重も大きい。また、葉色の低下がほとんどなく落葉率も低い(表2)。
6. 難透水層を破砕処理4ヶ月後の3月に1年生苗を定植し、4年を経過した樹(5年生樹)の生育は、樹高が3.3m、総新梢長が5.4m、平均新梢長が33.8pで、湿害による生育不良も見られず生育は良好である 。

[成果の活用面・留意点]
1. 本技術は平時の地下水位が低いこと、難透水層の下に砂質土壌など排水性の良い土層がある水田で適用できる。
2. 本技術に利用した重機は機械質量が4630kgで、使用したバケットは標準仕様(バケット幅65p)よりも狭い幅55pのバケットを利用しているが、標準バケットを利用しても同様な効果が期待できる。
3. 難透水層の破砕処理は苗木定植の前年の秋に行い、定植は翌年3月とする。

[具体的データ]
図1 JIM7台木「ふじ」2年生樹の根の湛水処理時間が樹体生育に及ぼす影響
図1 難透水層の破砕処理方法 図2 難透水層破砕処理後の排水性の経年変化
表2 難透水層の破砕処理がJIM7台「ふじ」2年生樹の生育に及あぼす影響(
[その他]
研究課題名:水田転換畑におけるJM台利用リンゴ栽培の開園技術(排水性改善技術)
予算区分:実用技術
研究期間:2005〜2009年度
研究担当者:舟橋志津子、濱谷聡志、徳満慎一、松田亨、大城克明、関口英樹

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