水田転換畑におけるニホンナシ「豊水」の少量隔離土壌・垣根仕立て一文字整枝法


[要約]
ニホンナシの少量隔離土壌・垣根仕立て一文字整枝栽培は、排水不良の重粘土壌や地下水位が高い水田転換畑においても栽培が可能である。

[キーワード]ニホンナシ、少量隔離土壌、垣根仕立て一文字整枝、水田転換畑

[担当]福井農試・園芸研究グループ
[代表連絡先]電話:0776−54−5100
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
主穀作経営を主とする集落営農組織等の多様な経営体に導入可能で、重粘土壌の水田転換畑において早期に収量が確保できる軽労で平易なニホンナシ栽培技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 棚の構造と植付方法:専用棚は、直径48.6mmの単管パイプ(規格品)をV字形に組み合わせて支柱とし支柱間に支線を3段に張る。この棚は、資材が入手しやすいこと、建設用機械が不要なことから農家の自家施工が可能である。(写真1右) 隔離ベッドは、高さ50p、直径95pでネット状のシートを筒状にし内側に不織布を沿わせて二重構造にする。
 底部に20o砕石を約10p厚に敷き、用土は山土:バーク堆肥:砂=5:2:3混合培土約260Lを詰め、苗木を仰角35°に植え付ける。苗木は直ちに主幹とする。(写真1左)植栽間隔は株間・列間いずれも3mとする。
2. 整枝方法:支線に、主幹から伸びた新梢(側枝)を整枝・誘引する。(写真1右) せん定では、初期収量確保のため平棚栽培よりやや多目の枝数を残す。
3. 施肥および灌水:施肥は表1参照。灌水は、pF1.8を超えないよう1日当たり約5.6L/ベッド×4回を基本とし降雨量を勘案して量を調節する。省力化のため、流量の安定した良質な水源を確保し、加圧ポンプ(または上水道)と灌水タイマーを組合わせる。
4. 収量性:20L不織布ポットで1年養成した大苗を密植(約110本/10a、間伐なし)するため、開園後早期に収量(目標3t/10a)が確保できる。目標収量を得るのに平棚栽培(福井県では定植時約40本/10a、成木時約10本)では定植後7〜10年必要とするのに対し、本方式では4〜5年に短縮可能である。(2005年に2年生苗木を定植。定植後3年目で272kg/10a、4年目で1,663kg/10a、5年目で3,106kg/10aとなる。(県内主産地の平均収量は2009年で3,495kg/10a・樹齢30〜31年生。)
5. 軽労化:平棚栽培に比べて上向きの作業姿勢が比較的少ないこと、また、身長が165p程度あれば主幹先端部のせん定および摘花(果)以外は脚立が不要であることから、労働負荷が小さい。(特に身長制限なし) 新梢誘引では地表150p以下の作業が約6割を占め軽労である。(表2) 収穫では平棚の約9割程度の時間で済む。(表3
6. 果実品質:2008・2009年それぞれで、果実重(kg/個)は0.51・0.49、糖度(Brix)は12.7〜13.9・11.8〜13.2と平棚と同等のものが得られた。
7. 経営収支:定植5年目(樹齢6年生)で所得24.1万円/10a(所得率43.1%)が得られる。

[成果の活用面・留意点]
1. 開園にあたっては他作物との労働競合をなるべく避けるが、必要な場合は労力を確実に確保し摘花(果)や新梢管理等の主要作業が決して遅れないようにする。
また、販売先・手法等を十分検討したうえで栽培規模を決定する。
2. 本研究の現地実証圃では、水源に農業用水を用い貯水・ポンプ加圧しているため、この設備工事に初期投資額約313万円の46%(143万円)を充てている。しかし、水源を上水道とすることで、灌水設備工事は約25万円で済み、初期投資額は約195万円となり、約38%のコストの節約となる。また水道料金も年間約4万円(105日間灌水の場合)と安価である。

[具体的データ]
写真1 左:開園直後の状況。 右:6年生樹の5月上旬の状況。
表1 垣根仕立て一文字整枝栽培の年間施肥量 
表2 作業の軽労化:豊水6年生樹の新梢誘引作業(2009年、10a当たり)
表3 作業の軽労化:豊水の収穫作業(2009年、h/10a(平棚対比%))
[その他]
研究課題名:北陸の気象・重粘土壌条件下での高商品性省力果樹栽培技術の開発
予算区分:国庫(実用技術開発事業)
研究期間:2005〜2009年度
研究担当者:坪田一良、木下慎也、坂川和也、長澤清孝、斉藤正志

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