コチョウランの低コスト花茎発生のための局所冷房装置の開発


[要約]
コチョウランの株基部を局所的に冷房することにより花茎を発生させる実用的な局所冷房装置を開発した。本装置の利用により、温室全体を冷房する慣行と比較して同等の花茎発生がみられ、消費電力量は、夏期は約25%、秋期は30〜50%削減できると推測される。

[キーワード]コチョウラン、花茎発生、局所冷房

[担当]愛知農総試・園芸研究部・花きグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
コチョウランは、25℃以下の低温で花茎発生することから、愛知県のような暖地では4月〜9月は昼間25℃・夜間18〜20℃の冷房が必要となり、多大な冷房費がかかる。そこで、花成に関する温度感応部位が株基部であることを利用して、株基部を局所的に冷房する実用的な局所冷房装置を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 開発した装置は、幅90〜180cm長さは20mまでのベンチに設置可能な、下部にダクト構造を持つ発泡スチロール製の箱型の形状であり、上部は帯状の不織布で覆われ、スポットクーラーまたはヒートポンプから冷気を取り入れ、装置内に冷気を均一に溜める(図1)。
2. コチョウランの株を箱型の装置内に入れ、葉のみを不織布の上に出して設置した後、さらに黒色の不織布を株元に覆い、遮光と冷気の漏れを防ぐ(図2)。
3. 日中は被覆部分に潅水チューブを設置して不織布を定期的に湿らすことにより、気化熱を利用して、株基部内温度を約3℃下げることができる。
4. ベンチ下を遮熱シートで覆うことで気温より3〜5℃低い空気をクーラーの吸気として利用することにより、冷房効率をさらに高めることができる。
5. 本装置を用いると、75%遮光された夏期の最高温度35℃前後の温室内においても、株基部内温度を25℃まで下げることができるため(図3)、約90%の株に花茎が発生し、ほぼ同じ温度で温室全体を冷房した慣行冷房(以下、慣行冷房)と同等の実用性が認められる(図4)。また、その後の開花品質も慣行冷房との差はほとんどない(データ略)。
6. 本装置の消費電力量は、慣行冷房より、夏期では約25%、秋期では30〜50%削減できると推測され、冷房コストの大幅な削減が実現できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 不織布の上は急激に温度が上昇するため、花芽となる腋芽(最終展開葉から数えて3〜4節下)が装置内に入るように株を設置する。
2. 本装置は花茎発生のみに有効で、高温期の開花には花茎発生後に慣行冷房が必要となる。9月以降は慣行冷房の必要はない。
3. 本装置は、冷房装備のない温室でのベンチ単位の冷房が可能であり、作業性の改善をさらに加えて、平成22年度までに改良型プロトタイプを完成、その後の市販化を目指している。

[具体的データ]
図1 局所冷房装置の構造(左:横断面、右:縦断面)
図2 局所冷房装置に株を設置 図4 局所冷房によるコチョウラン「Phal.Sogo Yukidian V3」、「アジアンビューテイー」の花茎発生状況
図3 局所冷房装置に設置されたコチョウランの株基部内温度
[その他]
研究課題名:コチョウランの局所冷暖房による超低コスト開花制御技術の開発
予算区分:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:小川理恵、大石一史
共同研究機関:東海物産株式会社
発表論文等:特許出願(特願2009-25080)

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