グラジオラス野生種のカルスからの植物体再生とコルヒチン処理による染色体倍加


[要約]
グラジオラス野生種は、球茎片を外植体とし、植物生長調節物質BAを添加したMS培地による液体振とう培養により、カルス経由で植物体を再生できる。培養カルスにコルヒチンを処理することにより、効率的に染色体が倍加できる。

[キーワード]グラジオラス、野生種、カルス、植物体再生、コルヒチン、染色体倍加

[担当]茨城県農業総合センター・生物工学研究所・果樹花き育種研究室
[代表連絡先]電話:0299-45-8331
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
グラジオラス野生種は香りを発散するなど特徴ある形質を有するものがあり、育種母本として期待されている。しかしながら、これまで多くの育種家が野生種と栽培種の交雑を試みてきたが、染色体の倍数性の違いなどにより実用的な品種の作出までは至っていない。そこで、野生種(2n=2x=30)の倍数性を栽培種(2n=4x=60)と同じくするために、カルスからの植物体再生とコルヒチン処理による染色体の倍加方法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 外植体として無菌球茎(5〜10mm径)の2〜3mm厚の切片を供試し、基本培地としてショ糖3%を添加したMurashige and Skoog (MS、pH5.8調整)培地を利用し、植物生長調節物質のベンジルアデニン(BA)を1あるいは2mg/l添加することにより、野生種14種でカルスが形成される(表1)。
2. Gladiolus odoratusG. uysiaeを除く野生種12種は、上記条件による培養を5か月間継続すると、カルスから植物体が再生する(表1)。
3. 再生した植物体は、6%ショ糖を添加したMS固形培地(固化は1%寒天、pH 5.8調整)に移植することで、球茎が肥大し安定的に継代培養が可能である。
4. G. venustus を除く野生種11種は、植物体再生が始まる直前のカルスに0.05%のコルヒチンを72時間処理することにより、18%〜80%の割合で染色体が倍加する(図1表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 開発した培養系とコルヒチン処理方法は、他のグラジオラス野生種にも応用可能と考えられる。
2. 染色体の倍加した野生系統は、栽培種との種間交雑に利用できる。

[具体的データ]
表1 グラジオラス野生種のカルス形成と植物体再生に及ぼすBAの影響 図1 グラジオラス野生種のフローサイトメトリー
表2 コルヒチン処理(0.05%72時間)したグラジオラス野生種の倍数性
[その他]
研究課題名:倍数性育種等によるグラジオラス新品種の育成
予算区分:県単
研究期間:2002〜2005年
研究担当者:鈴木一典、高津康正、郷内武、霞正一
発表論文等:Suzuki K. et al. (2005) Acta Horticulturae 673(1):175-181

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