チューリップ青色発現における分子メカニズムの解明
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[要約] |
チューリップの花底部で見られる青色発現は、液胞型鉄イオントランスポーター遺伝子の発現とフェリチン遺伝子の発現抑制が原因である。 |
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[キーワード]チューリップ、アントシアニン、花色、鉄イオン、遺伝子発現 |
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[担当]富山農総セ・農研・農業バイオセンター
[代表連絡先]電話:076-429-2111
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]研究・参考 |
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[背景・ねらい] |
チューリップ「紫水晶」の花は、アントシアニン色素(delphinidin 3-O-rutinoside)により花全体が紫色で花底部のみ青色(濃青色)を示す。この青色発現はアントシアニン色素と鉄イオンによる錯体形成が主な原因であり、青いチューリップを開発するため、青色発現に関わる遺伝子を明らかにする。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
花底部青色細胞と花弁上部紫色細胞で発現している遺伝子を解析すると、青色細胞では液胞型鉄イオントランスポーター(VIT)遺伝子が特異的に発現し、紫色細胞では鉄イオン貯蔵タンパク質のフェリチン(FER)遺伝子が特異的に発現する(図1)。 |
2. |
VIT遺伝子は花の発育段階初期(ステージ1〜3)に花底部表皮細胞で強く発現し、FER遺伝子は開花直前(ステージ4)に花弁上部表皮細胞で強く発現する(図2)。 |
3. |
細胞内においてFERは色素体にVITは液胞に局在する。それゆえ、花弁上部でのFER遺伝子の発現および花底部でのVIT遺伝子の発現は、それぞれの細胞内における鉄イオンの局在性が色素体と液胞に分かれていることを示唆している。そのため、花底部でのみ液胞内のアントシアニン色素が鉄イオンと錯体を形成し青色を呈すると推定できる。 |
4. |
パーティクルガンにより紫色細胞へVIT遺伝子を導入すると淡青色へと変化する。また、VIT遺伝子の発現と同時にFER遺伝子の発現を抑制すると濃青色へと変化する(図3、表1)。
これらの結果から、花底部での青色発現は液胞型鉄イオントランスポーター遺伝子の発現とフェリチン遺伝子の発現抑制によることが証明できる。
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[成果の活用面・留意点] |
チューリップ花弁での青色発現の分子メカニズムが明らかになることで、今後、遺伝子組換えによる青いチューリップの開発に繋がる。また、デルフィニジン色素による紫色の花をもつ他の植物においても、青色の花を開発できる可能性がある。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:分子細胞工学的手法による青いチューリップの開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:荘司和明、桃井千巳、山ア千夏、前田ェ明
発表論文等: | Shoji et al., (2010) Plant Cell Physiol. 51: 215-224.
Momonoi et al., (2009) Plant J. 59: 437-447.
Shoji et al., (2007) Plant Cell Physiol. 48: 243-251 |
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