果実肥大性に優れる緑肉メロン新品種「イバラキング」


[要約]
メロンの無加温半促成栽培に適応した新品種「イバラキング」は、果実肥大性に優れ、糖度が高く、食味が良い。また、日持ち性が良く、発酵の発生もやや難である。

[キーワード]メロン、育種、新品種、果実肥大性

[担当]茨城農総セ・生工研・野菜育種研究室、園研・野菜研究室
[代表連絡先]電話:0299-45-8330
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
茨城県のメロン生産は、ビニルハウスを利用して5、6月に出荷する無加温半促成栽培が主体であるため、寒さや天候不順の影響を受けやすい。生育期間が低温寡日照となる4月下旬から5月収穫の作型では、果実の小玉化や糖度不足による品質低下が問題となっている。そこで、4月下旬から5月収穫の作型に適した、果実肥大性に優れ、糖度、品質が安定している品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「イバラキング」は、種子親にネット型露地メロン培養系統の後代から選抜し果実肥大性に優れる「P2」を、花粉親にアールス型メロンの後代から選抜し果肉質が滑らかで食味の優れる「P32」を用いるF1品種である。
2. 「イバラキング」の雌花着生率は「アンデス5号」、「オトメ」と同等に高く、安定して着果する。開花日は、「アンデス5号」より早く、「オトメ」より遅い(表1)。
3. 「イバラキング」の果実重は、「アンデス5号」より重く、「オトメ」と同等以上で、果実肥大性に優れる。ネットは密に発生し盛り上がる。糖度は「アンデス5号」と同等で「オトメ」より高い。収穫7日後の果肉硬度は「アンデス5号」よりやや低いが、「オトメ」より高く、日持ち性が良い(表1図1)。
4. 「イバラキング」の果肉色は、「アンデス5号」が黄緑なのに対し、「オトメ」と同様に白緑である。発酵の難易は、「オトメ」が中であるのに対し、「アンデス5号」と同等のやや難である(表2図1)。
5. 現地適応性試験における担当農家へのアンケート調査では、ネットの発生がやや不安定と評価は低いが、果実肥大性、肉質、日持ち性の評価が高い(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 4月下旬から5月収穫の無加温半促成栽培に適する。
2. ネット発生が不安定な場合があるので、ネット発生期の低温や土壌水分の急激な変化を避ける
3. つる割病レース0、レース2に対しては抵抗性があるが、レース1、レース1,2w、レース1,2yには抵抗性がないので、発病圃場では土壌消毒を実施し、抵抗性台木に接ぎ木栽培を行う。
4. うどんこ病に対する耐病性は、「オトメ」や「アンデス5号」より弱い。
5. 種子生産は(社)園芸いばらき振興協会で実施する予定である。当面は茨城県内での普及を行なう。

[具体的データ]
表1 メロン「イバラキング」の果重および果実品質(2005〜2007年平均)
表2 メロン「イバラキング」の特性(2007年)
表3 メロン「イバラキング」の現地適応性試験担当農家の評価(2008年)
図1 メロン「イバラキング」の果実
[その他]
研究課題名:野菜新品種育成および地域適応性検定試験
予算区分:県単
研究期間:2003〜2008年度
研究担当者:宮城慎、金子賢一、松本雄一、石川友子
発表論文等:出願公表(2008年12月10日)−出願番号第22978号

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