防虫ネットを利用した化学合成殺虫剤に依存しないコカブ栽培


[要約]
コカブ施設栽培の春どり栽培及び秋どり栽培において、0.6mm目合い防虫ネットを展張すれば、殺虫剤の散布回数を慣行防除より4〜6回削減しても、コナガ等の食葉性害虫やハモグリバエ類の被害を慣行防除と同等に抑制でき、資材費も慣行防除と同等である。

[キーワード]コカブ、害虫防除、防虫ネット、天敵

[担当]千葉農林総研・生産技術部・野菜研究室
[代表連絡先]電話:043-291-0151
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
都市農業では、特に生産や販売現場で消費者との距離が近いことから、農薬をできる限り使わず品質の高い野菜を供給するための技術開発が求められている。そこで、化学合成殺虫剤に依存しないコカブ栽培を確立するため、施設栽培において防虫ネットによる物理的防除効果及びコレマンアブラバチ剤による生物的防除効果を明らかにする。また、農薬を使わない害虫防除法として、一時的な高温処理の効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 0.6mm目合い防虫ネットのハウス開口部展張により、薬剤防除区に比べ殺虫剤の散布回数を4〜6回削減しても、コナガ等の食葉性害虫、ハモグリバエ類による被害を薬剤防除区より軽減できる。ただし、秋どり栽培ではアブラムシ類の発生が認められるため薬剤防除が必要である(表1)。
2. アブラムシ類は、秋どり栽培において、防虫ネット展張とコレマンアブラバチ剤を併用することで、殺虫剤を散布しなくとも薬剤防除と同程度の防除効果が得られる(表1)。
3. 防除に必要な資材費は防虫ネット展張のみの場合、10a当り約1万円となり薬剤防除と同等であり、防虫ネット展張とコレマンアブラバチ剤を併用した場合は薬剤防除より約1万7千円多くなる(表1)。
4. 春どり栽培では、ネットの展張によりコカブの葉長、葉重がやや増加するが、根径、根重への影響はない(表2)。また、ネットの目合い0.6mmと1.0mmでは葉長に差はなく、目合いを細かくすることによる葉の徒長はない。
5. 暗黒条件下において湿度85%、43℃以上の高温処理を80分間行うと、コナガの幼虫及び成虫はほぼ死滅する(図1)。しかし、コカブは45℃で葉に障害が発生するため(データ省略)、コカブに障害を与えず、コナガを死滅させる温度幅は2℃と極めて狭い。

[成果の活用面・留意点]
1. 施設での夏どり栽培は高温により茎葉が軟弱徒長しやすいため、ネットの展張は栽培する作型を考慮して導入する。

[具体的データ]
表1 コカブ施設栽培における防除資材による虫害抑制効果と資材費
表2 施設栽培におけるネット展張がコカブの生育に及ぼす影響
図1 高温処理がコナガの幼虫及び成虫に与える影響
[その他]
研究課題名:新資材等を活用した都市軟弱野菜の省農薬・高品質生産技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:深尾聡、草川知行

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