アルミ蒸着フィルムによるナス品種「とげなし紺美」の果皮色と収量の向上


[要約]
ナス品種「とげなし紺美」は果皮色が淡いが、アルミ蒸着フィルムをマルチとすると地表面からの紫外線反射量が増加し、光反射効果により3月以降の地温上昇が抑制される。この結果、果皮色が濃くなり、可販果収量が増加し、秀品率が高くなる。

[キーワード]ナス、とげなし紺美、アルミ蒸着フィルム、果皮色、収量

[担当]愛知農総試・園芸研究部・野菜グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ナス品種「とげなし紺美」は、とげの発生がない省力型品種で、果実特性として光沢や果形が優れ、日焼け果発生が少ない。一方で、従来品種「千両」と比較して果皮色が淡く、春以降高温期の収量があがりにくいという問題点が指摘されている。そこで、光反射効果が高いマルチ資材を導入し、地表面からの光反射を利用した果皮色の向上を検討する。同時に、地温上昇抑制による高温期の増収効果も検討し、実用性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. アルミ蒸着反射フィルムを慣行の黒色ポリフィルムと同様に、畝上全体に敷設して反射マルチとする。反射フィルムは光の反射率が高いため、地面方向からの紫外線反射量が増加する。ナス群落内で光環境が良くない下部の果実着生付近の高さ70cm高で測定した地表面からの紫外線量は、11月〜5月のいずれの時期においても白黒ダブルポリフィルム、黒ポリフィルムよりも増加する(図1)。
2. 反射マルチにより、果皮色の外観評価値は向上し、果皮から抽出したアントシアン類色素の抽出液濃度の相対値は増加する(表1)。
3. 反射マルチ下の地温は、3月以降は黒ポリフィルムマルチ下に比べて低く、平均地温で2〜3℃(表2)、最高地温で3〜6℃(データ略)低下する。
4. アルミ蒸着フィルムを反射マルチとして敷設した場合の可販果収量は14.2kg/株で、慣行の黒ポリフィルムマルチより13%増加する。4月以降に秀品率も高まる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 当該技術は、果皮が硬くつやがよいが果皮色が薄い「とげなし紺美」を用いて開発したもので、他品種に適用する場合は光反射の増加による日焼け果発生に留意する必要がある。現在、品種登録出願公表中の単為結果性新品種「試交05-03」は果皮の特性が似ており、応用可能である。
2. 反射マルチの資材費を試算すると、10a当たりに約73,000円となる。しかし、可販果収量が増加することによる収入増570,000円が見込まれる。さらにアルミ蒸着フィルムはハウス内でマルチとして利用する場合、耐用年数が3年程度あるため有効性は高い。

[具体的データ]
図1 マルチの種類が時期別の紫外線量に及ぼす影響
表1 マルチの種類が時期別の果皮色と色素抽出量に及ぼす影響
表2 マルチの種類が月別平均地温に及ぼす影響
図2 マルチの種類を変えた場合の月別可販果収量と秀品率の推移
 
[その他]
研究課題名:新育成品種の利用
予算区分:県単
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:川嶋和子、山下文秋、矢部和則、榊原政弘
発表論文等:川嶋ら(2009)愛知農総試研報、41:77-83

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