静岡県の茶園に生息するカブリダニ類の種類と種構成


[要約]
静岡県の茶園には9種類のカブリダニが生息し、ニセラーゴカブリダニ、コウズケカブリダニ、ケナガカブリダニ、ニセトウヨウカブリダニが主要種で、ニセラーゴカブリダニが第1優占種の茶園が多い。ごく一部の茶園で、土着種ではないチリカブリダニが生息する。

[キーワード]チャ、カブリダニ、土着天敵、ニセラーゴカブリダニ、チリカブリダニ

[担当]静岡農技研(茶研セ)・生産環境(病害虫)
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
茶園に生息するカブリダニ類の多様性については不明な点が多い。現在、茶園における環境保全に関連した指標生物の選抜をすすめているが、そのための基礎資料として、静岡県内・中西部地域の茶園におけるカブリダニ類の種類と種構成を明らかにし、指標種を探索する。

[成果の内容・特徴]
1. 2008年と2009年の5月〜6月に牧之原地区を主体とする南部平坦地と川根地区の中山間地茶園におけるカブリダニ類の種類と種構成を調べた結果、9種類(ニセラーゴカブリダニ、コウズケカブリダニ、ケナガカブリダニ、キイカブリダニ、ニセトウヨウカブリダニ、トウヨウカブリダニ、フツウカブリダニ、ヘヤカブリダニ、チリカブリダニ;以後カブリダニ省略)が認められる(表1)。
2. 主要種は、ニセラーゴ、コウズケ、ケナガ、ニセトウヨウで、ニセラーゴは調査圃場の97.4%(74/76)で認められる。また、ニセラーゴが第1優占種である圃場は、全体の67%(51/76)である。
3. 2008年の南部平坦地(現地茶園)における種構成比では、ニセラーゴが7割近くを占め、次いでケナガが多い。中山間地では、ニセラーゴが7割以上を占め、ニセラーゴとニセトウヨウを含むムチカブリダニ属の占める割合は8割以上と高い(図1)。
4. 2009年の南部平坦地(現地茶園)における種構成比では、5月がケナガ、6月はニセラーゴが第1優占種である。中山間地においても、ニセラーゴが全体の6割を占める第1優占種であり、6月の種構成比は南部平坦地と類似する(図2)。
5. 静岡農技研茶研センター内の無農薬区、減農薬区(殺虫剤5回散布)、慣行防除区(殺虫剤12回散布)茶園におけるカブリダニ類の種構成比では、いずれの区もニセラーゴまたはコウズケの占める割が高いが、減農薬区と慣行防除区ではケナガも認められる(図3)。また、6月下旬〜7月になると、コウズケやケナガの占める割合が減り、ニセラーゴが個体群のほとんどを占めるようになる(データ省略)。
6. 2009年に調査した川根地区の1圃場とセンター内の1圃場において、土着種ではないチリが少数ながら確認され、本種が県内の茶園に定着していることが示唆される。

[成果の活用面・留意点]
1. 季節によってカブリダニ類の種構成が大きく変化する可能性がある。また、カブリダニ類の種構成は、ハダニなど餌害虫の発生量の影響を受ける可能性がある。
2. カブリダニの種類によって殺虫剤に対する感受性は異なると考えられ、カブリダニ類の種構成は散布農薬の影響を受けると推定される。
3. チリの由来は不明であるが、川根地区の発生茶園は従来から地区予察圃場となっていて地元以外の人の出入りが多い場所であるため、過去に他地域から持ち込まれた可能性がある。

[具体的データ]
表1 各種カブリダニが確認された圃場数


[その他]
研究課題名:土着天敵類の環境保全型農法と関連した生物多様性の指標生物の選抜
予算区分:委託プロ(生物多様性)
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:小澤朗人、内山徹、豊島真吾(農研機構果樹研)

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