栽培特性に優れる日本めん用小麦「さとのそら」の奨励品種採用


[要約]
小麦「さとのそら」は、「農林61号」と比較して、コムギ縞萎縮病抵抗性を有し、耐倒伏性に優れるやや多収の早生品種である。製粉適性や加工適性が同程度であるため、「農林61号」に替わる日本めん用小麦として奨励品種に採用する。

[キーワード]小麦、日本めん用、さとのそら、コムギ縞萎縮病抵抗性、多収

[担当]茨城農総セ農研・水田利用研、作物研
[代表連絡先]電話:0297-62-0206
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
「農林61号」は、日本めん用小麦として全国的に生産ロットが大きく、通常アミロース含量品種で汎用性が高いため、実需者からは一定の支持を得てきた。その一方で、熟期が遅い、倒伏しやすい、コムギ縞萎縮病に弱い等栽培特性が劣るため、年次によるバラつきが大きく、実需者からは量・質ともに安定した供給を強く要望されている。
 そこで、「農林61号」に替わる、栽培特性に優れた通常アミロース含量の日本めん用小麦を奨励品種に採用し、茨城県産小麦の評価向上と生産安定を図る。

[成果の内容・特徴]
 群馬県農業技術センターにおいて、早生、良質、多収を育種目標に、平成6年に「しゅんよう/きぬいろは」を母、「ニシカゼコムギ」を父として交配された。
「農林61号」に比べて以下のような特徴がある。
1. 播性程度がWであり(表1)、茎立ちが遅く凍霜害(幼穂凍死)を受けにくい。
2. コムギ縞萎縮病・うどんこ病・赤さび病に強く、赤かび病抵抗性は同等である(表1)。
3. 穂発芽性は難で、褐ふ品種である(表1)。
4. 出穂期は1〜4日早く、成熟期は2〜5日早い早生品種である(表2)。
5. 稈長は10p程度短く、耐倒伏性に優れる(表2)。
6. 穂長は同程度で穂数は多く、やや多収である(表2)。
7. 容積重はほぼ同等で、千粒重はやや重く、外観品質は同等〜やや優れる(表2)。
8. 製粉適性は同程度〜やや優れる(表3)。
9. うどん加工適性は同程度である(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. さとのそら」は「農林61号」に替え、県内全域を対象地域として普及する。普及面 積は約4,500haを目標とする。2010年産から大規模製粉試験に向けた試験栽培(15ha生 産量60t)を予定している。その後種子生産等に応じて普及拡大を図る見込みである。
2. 「農林61号」より耐肥性に優れるが、品質を考慮し適切な肥培管理を行う。
3. 赤かび病抵抗性は「農林61号」と同等であるため、適期防除を必ず行う。
4. 穂発芽性は難であるが、刈り遅れによる品質低下を避けるため、適期収穫を行う。

[具体的データ]
表1 育成地(群馬県)における「さとのそら」の特性概要

表2 奨励品種決定調査における「さとのそら」の生育・収量・品質

表3 「さとのそら」の製粉適性

表4 「さとのそら」のうどん官能食味評価
[その他]
研究課題名:研究課題名:麦類奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:2006〜2009年
研究担当者:樫村英一、寺門ゆかり、大越三登志、遠藤千尋、鈴木正明、飯田幸彦

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