長野県における水稲多収品種の収量性と立毛乾燥を前提とした耐倒伏性


[要約]
長野県の慣行栽培の施肥窒素量50%増条件下の移植栽培において「北陸193号」は100kg/a、「べこあおば」、「ほそおもて」、「ふくおこし」も安定して80kg/a以上の収量が確保される。また、これらの品種は耐倒伏性が強いため、ほ場で立毛乾燥してから収穫することが可能である。

[キーワード]水稲、多収、倒伏、立毛乾燥

[担当]長野農試・作物部
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年、畜産穀実飼料や米粉用として水稲多収品種の需要が見込まれ、国の食糧自給率向上政策のもと日本各地でその栽培、利用が試行的に始められている。低コスト生産のためには多収穫であること、また、成熟後ほ場立ち毛状態での乾燥を促すことが必要とされるが、これら品種・系統について登熟特性の解析と耐倒伏性を評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 「北陸193号」は2カ年とも約100kg/a(コシヒカリ対比50%増)の収量が確保され、最多収である。収量構成要素は籾数が50,000粒/m2以上確保され、登熟歩合80%以上と高い登熟特性が認められる。一方、ほぼ同熟期の「モミロマン」は籾数が60,000粒/m2以上確保されるが、登熟歩合が50%以下となり低収である(表1)。
2. 「べこあおば」、「ふくおこし」、「ほそおもて」が80kg/a(コシヒカリ対比23〜30%増)以上 の多収である(表1)。
3. 「べこごのみ」、「べこあおば」の籾わら比が1.4〜1.5と他品種の1.0〜1.2と比べ大きい(表1)。
4. 全品種とも成熟期において目立った倒伏の発生はない。
5. 「モミロマン」、「北陸193号」、「夢あおば」、「べこあおば」は成熟期後20日経過しても倒伏の発 生がごくわずかで、「ふくおこし」、「ほそおもて」は少〜中程度の倒伏に至る(表2)。
6. 稈基部の直径と挫折荷重、根量と押倒抵抗は正の相関関係があり、その値が大きいほど倒伏に対 する抵抗性が強まり、「モミロマン」、「北陸193号」では顕著である。(図1図2表2)。
7. 籾水分は、どの品種も成熟期後20日程度で13〜16%程度まで低下する(表2)。
8. 以上から、これら多収水稲品種は立毛で乾燥させ、そのまま保管可能な状態で収穫することが可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 火力乾燥に係るコストは20〜25円/kg程度である(長野県事例)。
2. 施肥条件は基肥N0.52kg/a+追肥N0.45kg/a(奨励品種決定調査の1.5倍)である。
3. 北陸193号は成熟期以降に軽い脱粒性(手作業収穫では脱粒)が認められる。
4. 「ふくおこし」の玄米には識別性がない。
5. 茎が太い「モミロマン」、「北陸193号」、「夢あおば」はニカメイチュウによる茎の食害がわずか 発生したが、いもち病は見られなかった。
6. 長野県須坂市(標高340m、中粗粒グライ土)での成績であり、2カ年とも秋期に台風の襲来は なかった。
7. 「ふくおこし」、「ほそおもて」は本県育成の飼料用奨励品種である。

[具体的データ]
表1 各品種の収量、収量構成要素、概観品質

表2 品種別倒伏程度と籾水分含量の推移
図1 根量と押倒し抵抗の関係 図2 稈基部の直径と稈の挫折荷重の関係
[その他]
研究課題名:水稲多収品種の選定
予算区分: 県単(素材開発)
研究期間:2008年〜2009年
研究担当者: 酒井長雄・青木政晴・土屋学

目次へ戻る