縞葉枯病抵抗性同質遺伝子系統水稲「ハツシモ岐阜SL」の奨励品種採用


[要約]
岐阜県の水稲作付面積の約40%を占める奨励品種「ハツシモ」は、縞葉枯病に罹病性であるため、縞葉枯病抵抗性を導入した同質遺伝子系統「ハツシモ岐阜SL」を育成し、奨励品種に採用した。

[キーワード]縞葉枯病抵抗性、奨励品種、水稲、ハツシモ、同質遺伝子系統

[担当]岐阜農技セ・作物部
[代表連絡先]電話:058-239-3131
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
昭和25年以来、水稲奨励品種として栽培されてきた水稲「ハツシモ」は、主産地である岐阜県平坦部で多発する稲縞葉枯病に罹病性であるため、岐阜県の施策である「ぎふクリーン農業」の目的である減農薬栽培の推進にあたって不利な点となっている。加えて、近年の高温登熟障害より充実不足が深刻化しており、本県の主要銘柄米の品質低下に歯止めをする必要がある。そのため、「ハツシモ」のブランド力を維持し、かつ縞葉枯病抵抗性を有する品種を育成し、奨励品種に採用する。

[成果の内容・特徴]
1. 戻し交雑法により「ハツシモ」にModan由来の縞葉枯病抵抗性を付与した同質遺伝子系統「ハツシモ岐阜SL(交配組合せ 岐系164号/6*ハツシモ)」を育成した(データ省略)。
2. 奨励品種決定調査において特性を評価した結果、奨励品種に採用する。
3. 「ハツシモ岐阜SL」の特性は、「ハツシモ」と比較して以下の通りである。
1) 出穂・成熟期は、ほぼ同一であり、晩生に属する(表1)。
2) 稈長は、やや短い(表1、2)。
3) 穂長は、ほぼ同じ〜やや短い(表1)。
4)穂数は、ほぼ同じ〜やや多い(表1)。
5)玄米収量は、ほぼ同じ〜多い(表1)。
6)千粒重は、ほぼ同じ〜やや軽い(表1)。
7)玄米品質は、ほぼ同じ〜やや優る(表1)。
8)玄米の外観品質は、機器分析による整粒率が優る(表1))。
9)玄米蛋白質含量は、ほぼ同じ〜やや高い(表1)。
10)縞葉枯病抵抗性を有する(表2表3)。縞葉枯病の抵抗性遺伝子はStv-biを持つ。
11)食味はほぼ同じであり、食味官能検査では有意な差は認められない(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本県平坦部の「ハツシモ」作付地帯へ作付される。普及予定面積は9,000haである。
2. 葉いもち病ほ場抵抗性は“弱”、穂いもち病抵抗性遺伝子Pb1を持たないため、いもち病の発生が予想される場合には防除が必要である。

[具体的データ]
表1 奨励品種決定調査基本調査

表2 奨励品種決定調査現地調査
表3 ヒメトビウンカ防除の省略による縞葉枯病罹病株率 表4 食味官能検査
[その他]
研究課題名:農作物の特性調査及び種苗生産事業・水稲の新品種育成
予算区分: 県単
研究期間: 2006〜2008年
研究担当者:荒井輝博、山田隆史、吉田一昭(農業技術課)、米山誠一

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