「コシヒカリ」における水浸裂傷粒の発生条件


[要約]
水浸裂傷粒の発生は、登熟期の気象条件による影響が大きい。出穂後20日間の平均気温が高く、日照時間が少ないと増加する。栽培条件では、登熟期に水分ストレスを与えない間断潅漑をすることで発生が抑制される。

[キーワード]水浸裂傷粒、コシヒカリ、高温・寡照、間断灌漑

[担当]茨城農総セ・農研・水田利用研究室
[代表連絡先]電話:0297-62-0206
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
水浸裂傷粒は、精白米を水に20分程度浸すことで米粒の周囲に裂け口を生じる粒を指す。炊飯すると崩壊粒となりやすく、10%以上の発生は炊飯米の外観、食味に悪影響を及ぼす。これまで、収穫後の乾燥や搗精時の要因が大きいと考えられてきたが、精米卸業者から茨城県産米は水浸裂傷粒の発生が多いとの指摘を受けており、その低減対策が求められている。
 そこで、気象条件や栽培法が水浸裂傷粒の発生に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 水浸裂傷粒は年次、移植時期による変動が大きい(表1)。高温または遮光処理を行うと、幼穂形成期の処理では水浸裂傷粒の発生に影響しないが、登熟初中期の処理では両処理とも発生を大幅に増加させる(図1)。
2. 幼穂形成期〜登熟期における生育ステージ別の気温、日照時間、風速、飽差との間に高い相関関係は認められないが(データ省略)、出穂後20日間の平均気温と日照時間を標準化した両者の差(高温と日照不足の影響を合わせた指標値)は、水浸裂傷粒との間に高い正の相関が認められる(図2)。
3. 作期変動に伴う生育パターン(草丈、茎数、葉色の推移)、収量構成要素の変化と水浸裂傷粒との関係は認められない(データ省略)。
4. 登熟期の水管理は、土壌水分の状態がpF1.0になったら入水し、自然落水を繰り返す間断灌漑をおこなうことで、常時湛水や稲に水分ストレスを与えるpF1.5及びpF2.0で入水する間断潅漑に比べ水浸裂傷粒の発生が減少する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 平年の気象条件からみると、茨城県では4月下旬に移植する南部及び西部で水浸裂傷粒の発生する危険が高まる。このため、千粒重向上や乳白粒軽減の目的から本県で推進している遅植え運動を活用し、水浸裂傷粒の発生しにくい作期への誘導を図る。
2. pF1.0で入水する間断潅漑法は、茨城県で既に普及・指導されている。詳細は2006年度関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作部会の成果情報「コシヒカリの乳白粒発生を軽減する登熟期の間断灌漑法」を参照する。
3. 搗精は水浸裂傷粒が発生しにくい衝撃式の機種(2006年はTP-2型:玄米20gを2分間搗精、2007年及び2008年はパーレスト:玄米10gを1分間搗精)を用いた。搗精歩合は2007年が平均89.1%(88.5〜89.1%)、2008年が90.0%(89.0〜90.5%)であった。
4. 水浸裂傷粒の判定方法は、砕米と粉状質粒を除いた精白米100粒を水温21℃の蒸留水に20分間浸漬後、グレインスコープTX-200で観察し、米粒の外周に口が開いたような亀裂が少しでも確認されればカウントした(日本精米工業会の調査方法に準拠)。

[具体的データ]
表1 移植時期、株間、植え付け本数が水浸裂傷粒の発生に及ぼす影響(2006〜2008年)

図1 高温・遮光処理が水浸裂傷粒の発生に及ぼす影響 (2007年)
図2 登熟期における高温・日照不足の指標値と水浸裂傷粒発生率の関係 表2 登熟期の間断灌漑が水浸裂傷粒の発生に及ぼす影響(コシヒカリ:2006年)
[その他]
研究課題名:水稲白米のひび割れ粒発生要因の解明と低減技術
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:田中研一、森拓也、狩野幹夫、弓野功、樫村英一

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