籾の損傷を防いで発芽力の高い水稲種子を生産する


[要約]
機械作業に伴う籾の損傷は発芽率を低下させる一要因である。収穫は籾水分が24%程度であることを確認し、一般用コンバインを用いる場合にはエンジンの回転速度を主食用収穫より下げて、脱芒機はブラシ回転式として籾の損傷を防ぐ。

[キーワード]水稲種子、損傷籾、発芽率、収穫速度、籾水分、脱芒方式

[担当]千葉農総研・育種研究所・水稲育種研究室成東育成地
[代表連絡先]電話:0475-82-2054
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
慣行の機械生産体系で収穫し、農産物検査に合格した種子でも、低温浸種や低温貯蔵後の発芽不良が報告されている。そこで、種子の収穫・調製作業を調査・解析し、この発芽率低下に関与する要因と作業上の留意点を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 収穫から種子調製までの機械作業で生じる内・外穎の一部が欠損した損傷籾は、外観が正常な籾に比べて発芽率が低い(図1)。
2. 種子専用コンバインでも、水分含有率が24%程度を超える籾を収穫すると、損傷籾率が高まり、収穫2か月後、半年後及び1年半低温貯蔵後の発芽率が低下する(図2)。
3. 一般用コンバイン(非種子用)では、適正水分の籾を収穫しても、エンジン回転速度が主食用の標準回転では、半年後の発芽率が低下する。また、水温5℃で浸種すると、10℃より発芽率が低下する(表1)。
4. 脱芒後の損傷籾率は脱芒方式で異なり、ブラシ回転式の方が現在普及している金属羽根回転式より低い傾向である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は早生品種「ふさおとめ」を供試して取りまとめたものである。
2. 成果内容は水稲種子生産者に対する指導の参考資料として活用する。
3. 種子専用コンバインで収穫する場合でも、エンジンの回転速度を標準より高めると、1年半低温貯蔵後の発芽率が低下する。
4. 10℃より低い水温で浸種すると機械で収穫、調製した種子の発芽率が低下する。

[具体的データ]
図1正常籾と損傷籾の発芽率
図2 機械収穫時の籾水分が損傷籾と発芽に及ぼす影響 図3 脱芒機の方式と損傷籾の発生程度
表1 一般用コンバインのエンジン回転速度と浸種温度の違いが発芽に及ぼす影響
[その他]
研究課題名:高品質種苗の低コスト安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:中村充明、平井達也

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