愛知県平野部水田に生息するカエル類における多様性指標の選定


[要約]
愛知県平野部水田に生息するナゴヤダルマガエルまたはツチガエルは、移植日、水深、農薬使用などの環境要素に影響されるカエル類の多様性を反映するため、生物多様性指標の一つとして適する。

[キーワード]水田、生物多様性、指標種、ナゴヤダルマガエル、ツチガエル

[担当]愛知農総試・作物研究部・作物グループ、環境基盤研究部・環境安全グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、生物多様性に配慮した水田営農が各地で進められている。その効果の評価には、生物種のモニタリングが必要であるが、膨大な種からなる地域固有の生物相を網羅的に把握することは容易でない。そのため、水田環境を代表する指標生物の選定が分類群毎に求められている。
 カエル類は水陸両方の環境を利用する水田生態系の食物連鎖の要である上、観察が容易なため、指標候補として有力である。そこで、愛知県平野部の水田におけるカエル類の生息状況を調査し、指標候補を選定するとともに、その保全に関与する環境要素を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 愛知県平野部水田ではカエル類は計5種が確認されるが、ヌマガエルまたはニホンアマガエルはほとんどのほ場に生息する(図1)。一方、ナゴヤダルマガエルとツチガエルは11%のほ場にしか生息しない。
2. 種数の増加とともに構成種は、ヌマガエル・ニホンアマガエルに、トノサマガエル、ナゴヤダルマガエル・ツチガエルが加わる。ナゴヤダルマガエル、ツチガエルが生息するほ場はカエル類の種数が多い(図1)。
3. 種数に影響する主な環境要素(レンジ0.5以上)は、移植日、作期の多様性、水深、農薬使用、水路の深さが挙げられる(表1)。また、幼生の個体数に影響する環境要素は、それらに加え畦畔の植被度と農道整備である(表1)。
4. カテゴリー間の比較では、移植日が6/1以降、作期の多様性や畦畔の植被度が低いほ場で種数または幼生個体数が少なく(表2)、これらの環境要素は幼生の成育期間や成体の生息環境に対する影響が大きい。
5. ナゴヤダルマガエル、ツチガエル(図2)は栽培やほ場の条件に関する環境要素に影響されるカエル類の多様性を反映するため、両種に着目したモニタリングは生物多様性評価の一つとして適する。

[成果の活用面・留意点]
1. 生物多様性を保全する稲作技術の確立に有用である。
2. 本成果は愛知県平野部水田での結果であり、他地域では異なる可能性がある。

[具体的データ]
図1 水田に生息するカエル類の種数とその構成
表1 数量化T類による水田の環境要素カテゴリーと、カエル類の種数・幼生個体数に対するレンジ
図2 多様性指標に適する2種の特徴 表2 各環境要素におけるカテゴリー間の種数と幼生個体数の比較
[その他]
研究課題名:水田の生物多様性を評価するための最適指標の確立
予算区分:県単
研究期間:2009年度
研究担当者:田中雄一、瀧勝俊、林元樹、尾賀俊哉

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