機能性多糖β-グルカンおよびアラビノキシランを多く含む裸麦新品種「ビューファイバー」H3


[要約]
二条裸麦新品種「ビューファイバー」は、機能性多糖のβ-グルカンを従来品種の2倍以上含有し、アラビノキシラン含量も高い。大麦粉としての利用や、β-グルカンやアラビノキシランの抽出用など、機能性食品原料として有用である。

[キーワード]二条ハダカムギ、β-グルカン、アラビノキシラン、食物繊維、大麦粉

[担当]作物研・大麦研究関東サブチーム
[代表連絡先]電話:029-838-8880
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
大麦穀粒には、他の穀物よりも多くの食物繊維が含まれており、特に胚乳細胞壁多糖のβ-グルカンは、血中コレステロールの低下、血糖値上昇抑制、免疫活性化機能など多くの優れた健康維持機能性があることが報告されている。
 そこで、大麦の新規需要開拓のため、β-グルカンやアラビノキシラン等の機能性多糖を従来品種よりも多く含む品種を育成する。このような「高機能性大麦」は、機能性成分の抽出コスト削減に有効であるとともに、粉体として加工利用すれば、既存の粉製品等に少量を混合するだけで外観や食感・食味を損ねることなく機能性成分を付加できるため、極めて有用である。

[成果の内容・特徴]
「ビューファイバー」は、裸性、オオムギ縞萎縮病抵抗性、高β-グルカン含量を育種目標として、「Riso M86(Carlsberg IIの突然変異系統で、 lys5h 遺伝子を持ち高β-グルカン含量)」を1回親、二条・裸性の「四国裸84号」を反復親とする戻し交雑育種法によって育成した二条裸麦で、以下の特徴がある(表1)。
1. 原麦及び精麦のβ-グルカンやアラビノキシラン含量が従来品種よりも多い(図1写真1)。
2. 秋播性程度Tのやや早生種で、「カシマムギ」よりも出穂期が1日程度、成熟期が4日程度遅い。
3. オオムギ縞萎縮病ウイルスI・II・III型に極強である。
4. うどんこ病抵抗性は極強、赤かび病抵抗性はやや強である。
5. 強稈で耐倒伏性は強い。穂長は長く、穂数が多いが、収量性は劣る。
6. 2.2mm以上の整粒歩合は4割程度である。
7. 澱粉合成系の変異遺伝子 lys5h を持つため、穀粒はしわ状になり(写真1)外観品質が劣る。
8. 搗精時間が長く、精麦白度が低い。

[成果の活用面・留意点]
1. 精麦品質が劣るため、粉体利用や機能性多糖抽出原料としての用途が想定される。
2. 収量性が低いので、痩せ地での作付けを避け、適正な肥培管理に努める。

[具体的データ]
表1 「ビューファイバー」の特性一覧
図1 「ビューファイバー」の機能性多糖含量 写真1 「ビューファイバー」の穀粒断面
[その他]
研究課題名:大麦・はだか麦の需要拡大のための用途別加工適性に優れた品種の育成と有用系統の開発
中課題整理番号:311-d
予算区分:基盤、委託プロ(加工)
研究期間:2000〜2009年度
研究担当者:吉岡藤治、塔野岡卓司、青木恵美子、河田尚之、吉田めぐみ
発表論文等:品種登録出願 第24500号(2010年1月)

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