大豆不耕起栽培導入先進地における播種履歴と収量データを用いた収量性評価と減収危険性の判定


[要約]
不耕起播種が大規模に導入された大豆産地での5年間の収量データには、不耕起播種と慣行播種で大きな差異は認められない。不耕起条件では湿・病害による枯死株発生が大きな減収要因であるが、減収が生じ易い場所と生じにくい場所に偏りが見られる。

[キーワード]大豆、不耕起栽培、播種履歴、圃場別全刈り収量

[担当]中央農研・関東東海水田輪作研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8532
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作、共通基盤・総合研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
大豆の不耕起播種は、転換畑における麦跡大豆の省力化や適期播種を可能にする技術として関東地域を中心に普及しつつある。他の栽培条件が同じ場合、不耕起播種の収量性は慣行栽培と比べて遜色がないとされるが、湿害を生じやすいという短所にもかかわらず、作業が降雨の影響を受けにくいという特性から慣行栽培に比べ劣悪な条件で播種作業が実施されるケースもあり、収量性の実態については不明な点が多い。そこで、不耕起播種栽培が先進的に導入されている筑西市田谷川地区において、GPSによる播種・収穫履歴(日時、圃場位置)収集と圃場単位での全刈り収量の調査を実施し、不耕起栽培の特徴の把握と減収の危険性の評価を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 圃場ごとの全刈り収量(品種:納豆小粒)は播種日の遅れに伴い緩やかに低下する傾向が認められるものの、同一播種日であっても収量に大きな幅を生じた。不耕起播種と慣行播種の収量性には、播種時期を考慮すれば差異があるとは言えない(図1)。
2. 2008年、2009年の不耕起播種では増収のための播種の早期化が図られているが、その一方で枯死の多発により大幅に減収する圃場の増加が見られる(図1)。
3. 不耕起条件での全刈り収量に対して播種日、立毛程度の影響はいずれも有意であるが、標準偏回帰係数が示すように播種日より立毛程度の影響が大きく、不耕起条件では湿害・病害による枯死株の発生が重要な減収要因となっている(表1)。
4. 周辺を道路・用排水路などの基本固定施設に囲まれた区画(圃区)に含まれる圃場の相対収量*の平均値を求め、危険性大:70%以下;危険性中:70〜90%;標準:90〜110%;中位安定:110〜130%;高位安定:130%以上に区分した。圃区単位での色分けから、減収しやすい圃区や安定して多収が得られる圃区の偏りのあることが示される(図2)。
   
* 不耕起条件での播種日(x)と収量(y)との回帰式(y=-1.7367x+191.86)から任意の播種日の収量推定値を求め、この値に対する個々の圃場の収量の100分率をもって相対収量とし、播種日の影響を補正した。

[成果の活用面・留意点]
1. 播種と収穫作業履歴は携帯型GPS(2007年成果情報)をトラクタおよびコンバインに装着し自動収集した。収量(水分15%)は、基本的に圃場単位でコンバイン収穫を行って得られたトラックスケールによる秤量値と水分含有率から算出した。
2. 得られた圃場地図(図2)は、耕起播種栽培法の選択、立枯れ性病害に比較的強い大豆品種への切り替え、減収要因解析等の基礎資料となる。

[具体的データ]
図1 播種法、播種日が大豆品種納豆小粒の子実収量に及ぼす影響

表1 不耕起播種条件での大豆品種納豆小粒の全刈り収量(y)と播種日(x1)、立毛程度(x2)との関係

図2 筑西氏田谷川地区での大豆不耕起栽培における減収の危険性(大島品種:納豆小粒)
 
[その他]
研究課題名:汎用不耕起播種機を基軸とするイネ−ムギ類−ダイズ体系の実証と経営評価
中課題整理番号: 211k.6
予算区分:委託プロ(担い手)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:松尾和之、浜口秀生、松山宏美、渡邊和洋、梅本雅、渡邊好昭

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