めんの生地物性を強化する小麦グルテニン・サブユニット遺伝子型を迅速に判定できるLAMPマーカーと簡易選抜システムの開発


[要約]
小麦のめん生地物性に関与する3種のグルテニン・サブユニット遺伝子型は、開発したLAMPマーカーを用いることにより迅速に判定できる。また、LAMPマーカーを育成初期世代で適用する新たな選抜システムにより、PCRマーカーを用いた従来のグルテン改良育種法と比較して、消耗資材のコストはほぼ同等で、作業時間・労力を大幅に削減できる。

[キーワード]小麦、生地物性、グルテニン、LAMPマーカー、DNAマーカー選抜

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・生物工学グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
東海地域の小麦生産は、水田農業の担い手農業者の生産シェアが高いため、小麦作が経営上極めて重要な位置を占めている。近年、東海地域において普及が進められている「イワイノダイチ」は、めんの粘弾性や色に優れるが、タンパク質含量が低く、製めん適性に関与するグルテンの質が弱いため、単品ではめんが作りにくいこと等が実需者から指摘されている。そこで、生地物性を強化するグルテニン・サブユニット遺伝子型を集積し、加工適性に優れた小麦新品種を効率的に育成するため、3つのグルテニン・サブユニット遺伝子型を簡易かつ迅速に検定できるLAMPマーカーを開発し、これらを利用した新たなグルテン改良育種の選抜システムを構築する。

[成果の内容・特徴]
1. 開発したLAMPマーカーは、めん生地物性を強化する3つのグルテニン・サブユニット遺伝子型(Glu-B3 座のg 型及びb 型、Glu-A3 座のd 型、Glu-A1 座のa 型及びb 型)を、濁度の変化を目視することにより迅速かつ簡便に検出できる(表1)。
2. 開発したLAMPマーカーとPCRマーカーとの適合率は99.7%と極めて高い。また村元ら(2005)により開発された、ガラス繊維濾紙を利用した簡易DNA抽出法を一部改変(5mm角の葉片に200μLの磨砕液(20mM Tris-HCl;2mM EDTA-Na2)を加え、ビーズショッカーで処理した磨砕液をガラス濾紙に付着させる)した改変ガラス繊維濾紙法との組み合わせにより、従来のPCR法と比較して、作業時間で約5分の1に削減でき大幅な効率化が可能である(表2)。
3. グルテン改良育種における新たな選抜システムは、(1)個体選抜時にGlu-B3座のふ色選抜(Fujii et al.2008)、(2)選抜個体を播種した幼苗でLAMPマーカーによる3つのグルテニン・サブユニット遺伝子型の判定、(3)系統栽培で目的遺伝子のPCRマーカーによる固定化確認、で構成される。これにより、育種選抜全体ではPCRマーカーを使用する従来の選抜法に比較して、消耗資材のコストはほぼ同等であるが、作業時間を約50%削減できる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. LAMPマーカーを用いた選抜は、特に育成初期世代での多数検体の取り扱いにおいてPCRマーカーに比較し、労力で80%、消耗資材のコストで20%の削減が可能であるため、開発したマーカーは育成の初期世代での選抜に特に適している。
2. LAMPマーカーは優性マーカーでホモ/ヘテロの識別が不可能であるため、遺伝子型の確定のためには共優性のPCRマーカー等による判定が必要である。

[具体的データ]
 表1 小麦品種に対して行った3種のグルテニン遺伝子型を識別するLAMP反応の結果

表2 従来法(PCR法)とLAMP法との比較対応表

図1  新たな選抜システムの概要とその省力効果
 
[その他]
研究課題名:東海地域におけるコムギの梅雨前収穫作型の開発と高品質生産の実現
予算区分:実用技術開発
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:福田至朗、吉田朋史、辻孝子、藤井潔、池田達哉(近中四農研)

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