土壌病害抑制バチルス属菌を高密度で維持させる牛ふん堆肥製造法


[要約]
乳牛ふんに廃白土を15%(W/W)添加し、密閉縦型発酵装置で堆肥化後、製品堆肥の大半を戻し堆肥としてフリーストール牛舎に戻す一連の循環システムにより、牛ふん堆肥中の病害抑制バチルス属菌を108CFU/gと高密度に維持できる。

[キーワード]病害抑制バチルス属菌、牛ふん堆肥、密閉縦型発酵装置、廃白土、戻し堆肥

[担当]三重農研・循環機能開発研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6357
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
環境保全型農業の実施にあたり生産現場における重要性が高い事項として、化学合成農薬に依存しない病害防除技術の開発が望まれている。そこで、廃白土の添加や堆肥化プロセスの制御によって、植物病原菌の拮抗微生物を含む高機能堆肥を作成し、化学合成農薬使用回数削減を目指す。また、家畜排せつ物以外のバイオマス資源の利活用にも貢献し、環境保全に配慮した低コスト堆肥製造技術を実現する。

[成果の内容・特徴]
1. 乳牛ふん(生ふん)には病害抑制バチルス属菌が存在し、これに植物油工場から排出される廃白土を15%(W/W)添加して堆肥化すると、その菌密度は106CFU/g(現物あたりで表示)以上となる(図1)。
2. 廃白土の15%(W/W)添加に加え、製品堆肥の大半(80%程度)をフリーストール牛舎に戻す「戻し堆肥」を組み込むことにより、堆肥品温が70℃以上になる密閉縦型発酵方式では総菌密度は低下するが、製品堆肥における病害抑制バチルス属菌の密度は100倍程度高まる。他方、開放撹拌方式では、堆肥化前後の総菌密度や病害抑制バチルス属菌に増減は認められない(図2)。
3. 現地畜産農家では、廃白土の15%(W/W)添加と「戻し堆肥」を組み込むことにより、病害抑制バチルス属菌密度が年間を通じて108〜109CFU/gに維持できる。(図3)。
4. 病害抑制バチルス属菌を108CFU/g含む牛ふん堆肥は、現物1t/10aの施用で、ポット栽培試験(データ略)および現地農家圃場においてブロッコリー根こぶ病の発病を殺菌剤散布区と同様に抑制する(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、特許第3921674号を基本に得られた。実施にあたっては、三重県との実施許諾契約締結が必要となる。とくに農薬等の効能効果を標ぼうし又は暗示するもの等に関する表示説明については、契約書で事前相談することとしている。
2. 病害抑制効果を明示するためには、農薬としての登録が必要になる。
3. 廃白土は、保管中に自然発火する危険があるので、堆積物としては浅く広げて放熱できるようにする。
4. 現在までにポット栽培試験において抑制効果を認めている病害は、ナバナ根こぶ病、タアサイ萎黄病があり、寒天培地上で病原菌の生育抑制効果が確認されたものとしては、トマト根腐萎凋病菌がある。
5. 製品堆肥を500円/20kg/袋で販売することができれば、畜産農家の収益増となり、またブロッコリー栽培農家の生産費は殺菌剤の削減により9,000円/10a節減できる。

[具体的データ]
図1 廃白土の添加量が牛ふん堆肥中の病    害抑制バチルス属菌密度に及ぼす影響(n=3) 図2 堆肥化方式の相違(戻し堆肥導入条件)    が牛ふん堆肥中の病害抑制バチルス属菌密度に及ぼす影響(n=3)
図3 廃白土と戻し堆肥の導入による病害抑制バチルス属菌密度の月別推移(n=3)
図4 牛ふん堆肥の施用がブロッコリー根こぶ病の発病に及ぼす影響
[その他]
研究課題名:作物病害の抑制効果を持つ微生物の堆肥化過程での増殖技術
予算区分:県単、委託プロ(バイオマス)
研究期間:2005年度、2007〜2009年度
研究担当者:村上圭一、鈴木啓史、黒田克利(三重農研)、加藤直人(中央農研)
発表論文等:村上ら(2010)土肥誌、81(4):印刷中

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