農作物中重金属等多元素の硝酸抽出・ICP発光分析法


[要約]
作物体粉砕物を1M硝酸で振とう抽出した溶液を用いて、カドミウム、マグネシウム、マンガン等を硝酸分解法と同程度の精確さでICP発光分析できる。

[キーワード]多元素、ICP発光分析、1M硝酸、抽出分析

[担当]千葉農林総研・生産環境部・環境機能研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9995
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
農作物中の重金属等各種元素は、試料を強酸で分解した後に定量される。しかし、酸分解は、専用の装置や長時間の高温加熱を要するため、多点数の一括処理が困難である。このため、出荷前検査のような多点数の分析において、簡易分析法の開発が望まれている。
 このような状況から、1M塩酸で抽出するカドミウムの簡易分析法が確立されている(中島、2008)が、その他の各種元素を含めた同時分析は検討されていない。そこで、カドミウム等の各種元素を迅速に定量するために、この1M塩酸分析法に準じた抽出条件を適用し、抽出液にICP発光分析法の測定に際して干渉の影響が少ない1M硝酸を用いた簡易分析法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 1M硝酸抽出法の手順は、次のとおりである。試料を乾燥後、超遠心粉砕機で0.5mmのスクリーンを用いて、均質に粉砕する。粉砕試料1gを100mL容のポリビンに入れ、1M硝酸を20mL加えて、室温で60分振とうした後、ろ紙No.5Bを用いてろ過し分析用抽出液とする。
2. 抽出液中の多元素を、ICP発光分析法で同時分析すると、カドミウム、マグネシウム及びマンガンの分析値は、硝酸分解法の値に比べてわずかに低い93〜96%の値となり、両者の関係式の決定係数が0.96〜1.00で高い(図1表1)。
3. 銅、亜鉛及びリンは、硝酸分解法よりやや低い86〜88%の値となるが、決定係数は0.96〜0.98で高い(表1)。カリウムは80%の値となり、決定係数が0.90で回帰式のあてはまりが若干悪い(図2表1)。
4. カルシウムと鉄は、硝酸分解法による値との密接な関係が認められず、定量ができない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. カドミウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛及びリンでは、硝酸分解法と1M硝酸抽出法との関係式の傾きが0.86以上、決定係数が0.96以上で高いことから、表1に示した関係式を用いて、高い精確さで含量を推定することができる。
2. カリウムでは、スクリーニング分析等に利用できる。
3. カドミウムと銅では、抽出液の濃度が0.1mg/L以下であるので、測定にフレーム原子吸光法は適用できない。

[具体的データ]
図1 カドミウム含量に関する硝酸分解法と1M硝酸抽出法との関係 図2 カリウム含量に関する硝酸分解法と1M硝酸抽出法との関係
表1 硝酸分解法と比較した各元素の1M硝酸抽出法による分析の精確さ
[その他]
研究課題名:農作物並びに土壌中重金属モニタリング実態調査
予算区分:県単
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:八槇 敦

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