家畜ふん堆肥連用ほ場におけるリン酸肥料、カリ肥料の無施用栽培


[要約]
牛ふん堆肥3t/10aまたは豚ふん堆肥2t/10aを連用し、土壌中に可給態リン酸、交換性カリが基準以上に蓄積した畑では、リン酸肥料、カリ肥料を施用しなくてもスイートコーン(夏作)、年内穫りキャベツ(冬作)の収量は慣行の化学肥料区と概ね同等である。

[キーワード]家畜ふん堆肥、減肥、カリ、リン酸

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・環境安全グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
本県では家畜ふん堆肥を主体とした有機質資材を利用した土づくりが盛んである。しかし、投入された堆肥中成分を考慮した減肥の実施は定着していない。そのため、作物に吸収されなかった残存成分の土壌蓄積や系外流出による環境負荷が懸念されている。そこで、現場において取り組みやすい施肥削減方法としてリン酸肥料、カリ肥料を施用しない栽培方法を確立するため、家畜ふん堆肥を連用したほ場において、作物収量、土壌養分の推移を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 牛ふん堆肥3t/10aまたは豚ふん堆肥2t/10aを5年連用した畑(夏作:スイートコーン、冬作:年内穫りキャベツ)において、リン酸肥料、カリ肥料を3年間施用しなくてもスイートコーン、年内穫りキャベツの収量は化学肥料(慣行)区と概ね同等である(図1図2)。
2. カリ肥料、リン酸肥料無施用栽培開始前(堆肥連用5年後、2006年キャベツ収穫後)の豚ふん堆肥区、牛ふん堆肥区、化学肥料区の可給態リン酸含量は263、247、177mg/100g(愛知県施肥基準におけるスイートコーン・キャベツの適正値:30〜50mg/100g)、交換性カリ含量は30、37、16mg/100g、カリ飽和度は10.0、12.7、7.6%(スイートコーンの適正値:8.6〜10.4%、キャベツの適正値:8.4〜10.0%)である(図3)。
3. リン酸肥料、カリ肥料を無施用で栽培を続けることにより、豚ふん堆肥区(堆肥2t中にカリ平均37kg、リン酸平均82kg含有)では土壌中可給態リン酸含量、交換性カリ含量が低下し、牛ふん堆肥区(堆肥3t中にカリ平均75kg、リン酸平均56kg含有)では両含量とも上昇する傾向がある(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 家畜ふん堆肥を施用しているほ場において施肥指導の参考になる。
2. 栽培する作物や堆肥の成分、施用量によって作物の養分要求量、堆肥からの肥料成分供給量、土壌中成分の推移が異なるため、定期的に堆肥及び土壌分析を実施する必要がある。
3. 試験ほ場における試験期間中のCECは、豚ふん堆肥区5.5〜8.8me/100g、牛ふん堆肥区5.5〜9.5me/100g、化学肥料区4.5〜5.8me/100gである。
4. リン酸肥料、カリ肥料を施用せずに栽培を始めて3年目までの結果であるため、より長期の影響を明らかにするためには継続試験を行う必要がある。
5. 堆肥の連用は、地力窒素の増加を伴うため、窒素の減肥も考慮する必要がある。

[具体的データ]
図1 各年次におけるスイートコーンの収量指数
図2 各年次における年内穫りキャベツの収量指数
図3 試験ほ場の作土における交換性カリ含量、可給態リン酸含量の推移
[その他]
研究課題名:バイオマス利活用フロンティア推進事業、リスク管理型土壌環境保全調査事業
予算区分:国補、県単
研究期間:2003〜2006年度、2007〜2013年度
研究担当者:瀧勝俊、恒川歩、池田彰弘、北村秀教、大竹敏也、尾賀俊哉

目次へ戻る