飼料イネ「リーフスター」の乾物生産と品質に対する牛糞堆肥と窒素施肥の影響


[要約]
牛糞堆肥2t/10aに加えて窒素として硫安2kg/10aと被覆尿素10kg/10aを施用して「リーフスター」を移植栽培すると、カリウム濃度は2%以下、乳酸菌添加サイレージのV-scoreは80以上となる乾物が1.9t/10a得られ、土壌からの窒素収奪と過剰な養分蓄積が生じない。

[キーワード]牛糞堆肥、飼料イネ、飼料品質、施肥法、リーフスター

[担当]中央農研・関東飼料イネ研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8817
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・総合研究(飼料イネ)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
粗飼料自給率を向上させるため、飼料イネの生産が推進されている。生産費低減のために高乾物生産が求められる中、資源循環の観点から牛糞堆肥を利用した栽培も望まれている。また、稲体が大きい飼料イネ専用品種の地上部全てを収穫すると土壌からの養分収奪量も大きい。そこで、飼料イネ「リーフスター」の乾物生産を高める牛糞堆肥と窒素肥料の施肥法を検討し、養分収支と飼料品質に対する施肥法の影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 牛糞堆肥を2〜3月に散布し、硫安と被覆尿素(40日タイプ:70日タイプ:シグモイド型100日タイプ=2:2:1)をほぼ1対5の比率で施用して、「リーフスター」を5月上旬に移植すると、窒素肥料12kgN/10aと牛糞堆肥2t/10aまたは6t/10aを組み合わせた場合に乾物生産が最大となり、このときの全乾物重は1.9t/10aである(図1)。
2. 窒素12kg/10aを施用した場合、牛糞堆肥6t/10aを施用すると大雨・台風通過後に倒伏し、機械収穫が困難になる(表1)。
3. 収穫物の可消化養分総量(TDN)およびリン濃度への施肥の影響は小さい。窒素肥料または牛糞堆肥施用により、収穫物の窒素濃度は上昇し、ビタミンE濃度およびサイレージのV-score値は低下する。窒素肥料と牛糞堆肥を併用するとカリウム濃度が上昇し、V-score値は著しく低下する。しかしながら、牛糞堆肥2t/10aと窒素肥料12kgN/10aの施肥法で得られた収穫物のカリウム濃度は給与に留意すべき水準とされる2%には達せず、乳酸菌の添加によりサイレージのV-scoreも問題のない値となる(表1)。
4. 牛糞堆肥無施用では、窒素12kg/10aを施用しても窒素収支はマイナスになり、土壌の可給態窒素濃度が低下する傾向がみられる。一方、牛糞堆肥6t/10aを施用すると窒素・カリウム・リンが著しく過剰となる。牛糞堆肥2t/10aと窒素12kg/10aの施用では土壌からの窒素収奪と過剰な養分蓄積が生じない(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 2006〜2009年に中央農研谷和原水田圃場(細粒灰色低地土)で栽培試験を行った結果であり、気象・土壌条件の類似した地域で活用できる。
2. ここで使用した牛糞堆肥の平均成分は乾物率0.49± 0.1、N: 2.4± 0.3%(うち塩化カリウム抽出性NH4-N: 1670± 480mg/kg、NO3-N: 694± 540mg/kg)、K: 2.1± 0.3%、P: 1.0± 0.5%、CN比12.6、副資材に剪定枝チップ・籾殻を含む。
3. 牛糞堆肥0t/10aは2003年に牛糞おがくず堆肥を2t/10a施用し、2004年以降は牛糞堆肥無施用で、牛糞堆肥2tおよび6t/10aは2003〜2005年に牛糞おがくず堆肥2t/10aを連用して飼料イネを栽培している。
4. 牛糞堆肥0t/10aは2006〜2007年はPK無施用、2008〜2009年はPK肥料を施用している。

[具体的データ]
図1 牛糞堆肥および窒素肥料の施用量と「リーフスター」の全乾物重の関係 図2 牛糞堆肥および化成肥料由来の養分投入量と「リーフスター」の養分吸収量の差
表1 黄熟期の倒伏程度、稲体の各種成分濃度およびサイレージの発酵品質
図3 土壌の可給態窒素、可給態リン酸および交換性カリウムの推移
[その他]
研究課題名:関東地域における飼料イネの資源循環型生産・利用システムの確立
中課題整理番号: 212b.3
予算区分:委託プロ(えさ)
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:草佳那子、石川哲也、三枝貴代、石田元彦、中西直人、守谷直子

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