砂地露地畑における牛ふん堆肥由来窒素の動態


[要約]
砂地露地畑に施用した重窒素標識牛ふん堆肥は、施用2年後までに堆肥由来窒素の17〜18%が溶脱し、10〜13%が作物に吸収される。堆肥施用量が窒素換算で10〜40 gm-2の範囲において、施用量の違いが堆肥由来窒素溶脱率及び利用率に及ぼす影響は小さい。

[キーワード]重窒素標識、牛ふん堆肥、砂地露地畑、窒素動態

[担当]静岡農林研・生産環境部
[代表連絡先]電話:0538-36-1556
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
砂地露地畑では、地力を高めることを目的に堆肥等の有機物が施用されてきたが、他の土壌に比べて透水性がよいため窒素が溶脱しやすく、有機物施用により環境に大きな負荷を与えることも懸念される。従って、作物生産と環境保全との調和がとれた有機物施用法を確立するためには、作物吸収と土壌残存だけでなく溶脱も含めた有機物由来窒素の動態を解明することが重要である。そこで重窒素で標識した牛ふん堆肥を用い、堆肥の窒素施用量の違いがニンジン−スイートコーン体系(年2作)における堆肥由来窒素の収支に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 1作目に施用した標識堆肥由来窒素は、施用2年後までに17〜18%が溶脱し、10〜13%が作物に吸収される。溶脱率及び利用率はいずれも、堆肥窒素施用量にかかわらずほぼ同じである。これに対し無植生堆肥N20区の溶脱率は、同じ施用量の栽培区(堆肥N20)に比べ著しく多くなり、溶脱率と利用率の合計とほぼ等しくなる(図1)。
2. 堆肥N10〜40区の1年目に施用した標識堆肥由来窒素の溶脱は、施用当年が10〜11%、2年目が7〜8%、作物による吸収では施用当年が8〜10%、2年目が2〜3%となり、いずれの年次も堆肥窒素施用量にかかわらずほぼ同じになる(図2)。このことから堆肥窒素施用量が10〜40 gm-2の範囲では、施用量の違いが溶脱率及び利用率に及ぼす影響は小さい。
3. 堆肥N10〜40区の標識堆肥由来窒素は、施用2年後においても施用量の半分程度が土壌中に残存しており、その71〜85%が表層(0〜10p)に、残りは下層に存在する(図1)。一方無植生堆肥N20区の施用2年後における土壌残存率は、堆肥N20区に比べ減少する。これは植生の有無により、地表面付近の地温に影響を及ぼしたことが原因の一つと考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 砂地露地畑において、堆肥由来窒素の溶脱や残存を考慮し施用量を判断する際の基礎資料として活用できる。
2. 本試験は、有機物施用履歴のない砂地露地畑において重窒素標識牛ふん堆肥を用い、トンネル栽培ニンジン−スィートコーン体系により2年間栽培して得られた結果である。
3. 供試した牛ふん堆肥は標識サイレージを乳牛に給餌して作成されたもので、副資材は添加されていない。

[具体的データ]
図1 1年目に施用した標識堆肥由来窒素の2年後における回収率
図2 1年目に施用した標識堆肥由来窒素の年次別溶脱率と利用率 図3 1年目に施用した標識堆肥由来窒素の2年後の土層別残存割合
[その他]
研究課題名:砂地野菜畑における畜産由来有機性資源の循環利用に伴う環境負荷物質の動態解明と環境負荷低減技術の開発
予算区分:国補(指定試験)
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:福島 務、高橋智紀

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