「クロップナビ(作物の栽培支援装置)」によるイネいもち病(葉いもち)の感染予測


[要約]
クロップナビは圃場単位で作物の栽培支援情報を提供する簡易なスタンドアローン型の装置である。これを利用するとイネいもち病(葉いもち)の感染予測結果を圃場で入手でき、防除要否・防除適期の判断に活用できる。

[キーワード]イネいもち病、感染予測、クロップナビ

[担当]長野農試・環境部・作物部・企画経営部、アスザック株式会社
[代表連絡先]電話:026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
長野県ではイネいもち病の発生状況が年や地域により大きく異なり、適切な防除を行うためには発生状況に応じた防除要否の判断が必要となる。現在発生予察にはアメダスデータを使用した感染予測モデルを利用しているが、観測地点の制限から広域的利用にとどまっている。そこで、圃場設置型の簡易な計測装置を使用して圃場単位で利用できる感染予測技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. クロップナビは気温・降水量・葉面湿潤を測定するセンサー、その制御および解析を行うコンピュータ、タッチパネル式の操作機能を持ち感染条件の判定結果を表示する液晶表示部からなり、圃場の観測データから葉いもちの感染予測を行う圃場設置型の装置である(図1)。圃場で予測結果を知ることができ、即時に防除要否の判断材料を得ることができる。
2. クロップナビによる葉面湿潤時間および葉いもちの感染予測結果は従来のアメダスデータを使用した予測モデル「BLASTAM」(越水・林 ;1988)による結果とほぼ同等である (表1)。また本感染予測結果から(平均気温から推定した潜伏期間を7日程度とすると)無防除圃場の葉いもちの進展状況をおおむね説明できる (図2)。
3. クロップナビは12Vバッテリーを電源とし小型で操作が簡便であるため、設置場所を選ばず生産現場で活用しやすい。通信機能を付加することにより遠隔地のデータを定期的に入手することもできる。

[成果の活用面・留意点]
1. クロップナビは葉面湿潤センサーと0.2mm単位の雨量計による測定値から葉面湿潤時間を算出しており、BLASTAMのアメダスデータの0.5mm単位の降水量と気温・日照時間・風速から葉面湿潤時間を算出する方法よりも高い精度で感染好適条件を検出できる。
2. クロップナビによる葉いもちの感染予測は環境条件のみから行っているため、防除要否等の判断は感染予測結果のほか、圃場の発生状況や広域予察情報を含めて総合的に判断することが望ましい。
3. クロップナビは葉いもちの感染予測の他にイネの出穂期や成熟期を予測して表示することもできるが、現在は予測式に長野県独自のパラメータを使用しているため長野県の仕様となっている。
4. クロップナビ(ASZ-B0715)はアスザック株式会社で発売されている。

[具体的データ]
図1 クロップナビの外観 図2 クロップナビによる葉いもちの感染条件判定結果と発病推移(2008年飯山市)
表1 クロップナビによる葉面湿潤時間(実測値)と気象観測機*のデータを用いたBLASTAMによる葉面湿潤時間(推定値)の比較
[その他]
研究課題名:病害感染予測機能を備えた作物の栽培支援装置(クロップナビゲーション)の開発 
予算区分:高度化等
研究期間:2007年
研究担当者:和田美佐、武田和男、鈴木剛伸、山下亨、新井利直、山崎研一(アスザック)
発表論文等: 1) 和田ら(2009)関東病虫研報、56:5-7
2) 長野県、アスザック株式会社「作物の栽培支援装置」特開2006-212008

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