アカスジカスミカメ雄成虫を誘引する合成フェロモン剤の作製


[要約]
アカスジカスミカメの性フェロモンはHexyl butyrate、(E)-2-Hexenyl butyrateおよび(E)-4-Oxo-2-hexenalで構成される。合成フェロモン剤(最適混合比率5:1:10、総量64μg)の雄成虫に対する誘引性は未交尾雌10頭と同等である。

[キーワード]アカスジカスミカメ、イネ、斑点米、性フェロモン、モニタリング

[担当]中央農研・斑点米カメムシ研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8481
[区分]共通基盤・病害虫(虫害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
アカスジカスミカメは、斑点米を発生させコメの品質を著しく低下させる。本種雄成虫は雌成虫に誘引され、雌成虫由来の性フェロモンの存在が示されている。本種のフェロモン成分の化合物を誘引源としたトラップが開発されれば、野外で本種の発生消長を把握できる。
 そこで、アカスジカスミカメ雌成虫から放出される性フェロモンを構成する成分の同定・合成を行い、化合物の 総量(および混合比率)と雄に対する誘引性の関係について調査し、実用上最適な合成フェロモン剤の組成について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. アカスジカスミカメ雌成虫を溶媒抽出すると、Hexyl butyrate、(E)-2-Hexenyl butyrate、(E)-4-Oxo-2-hexenalの3成分が検出される(図1)。
2. 野外誘引試験において、同定された3成分すべてを混合すると雄成虫が誘引されるが、2成分のみの組み合わせでは誘引性は認められない(図2)。
3. 3成分の化合物を混合(混合比率5:1:10)して合成フェロモン剤を作製すると、総量64μgにおいて誘引される雄成虫数が多くなる(図3)。
4. 本合成フェロモン剤は未交尾雌10頭と同等の誘引活性を示す(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本種の発生予察技術を開発するための基礎的資料となる。
2. 本合成フェロモン剤は灰色ゴムキャップ(1F Sleeve Stopper 1888 Gray, 8 mm outside diameter, West Pharmaceutical Services Singapore Pte Ltd., Singapore)に含浸させたものである。
3. 本合成フェロモン剤およびこれらの成分を用いた直接的な防除技術については検討されていないので、現在は本合成フェロモン剤をアカスジカスミカメの防除に用いることはできない。

[具体的データ]
図1 アカスジカスミカメの性フェロモン成分	図2 3成分の組み合わせによる雄成虫の捕獲同一英文字は5%レベルで有意差がないことを示す(TukeyのHSD検定)

図3 化合物量と雄成虫捕獲数の関係検定サンプル間は5%レベルで有意	図4 合成フェロモン剤および未交尾雌10頭の誘引活性の比較5%レベルで有意差無し(t-検定)
[その他]

研究課題名:斑点米カメムシ類の高度発生予察技術と個体群制御技術の開発
中課題整理番号: 214g
予算区分: 基盤、実用技術開発
研究期間:2002〜2009年度
研究担当者:  安田哲也、重久眞至(滋賀農技セ)、湯浅和宏(滋賀農技セ)、奥谷恭代(鳥取農試)、寺本憲之(滋賀農技セ)、渡邊朋也、望月文昭(信越化学)、奥 圭子、樋口博也、高橋明彦、菅野 亘、山下美与志(信越化学)、福本毅彦(信越化学)
発表論文等: 1) Yasuda T. et al. (2008) Appl. Entomol. Zool. 43(2):219-226
2) Yasuda T. et al. (2009) Appl. Entomol. Zool. 44(4):611-619
3) 安田、望月(2009)植物防疫、63(6):345-348


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