青枯病菌における過酸化水素感受性状態からの復帰


[要約]
青枯病菌を低温下に長期間静置すると、過酸化水素に対する感受性が高まる。しかし、これら細胞を低温下から常温下に移すと数時間後には過酸化水素感受性状態から復帰することが示唆される。

[キーワード]青枯病菌、低温ストレス、過酸化水素感受性、復帰、ピルビン酸ナトリウム

[担当]中央農研・病害虫検出同定法研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8931
[区分]共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
細菌は、低温などのストレスが加わると、標準的な培地上で増殖できない状態に遷移する。これは、培地を高圧蒸気滅菌する際に発生する過酸化水素に対する感受性が高まることが一因である。また、過酸化水素を分解するピルビン酸ナトリウム(SP)を培地に添加することによって、無毒的な培養条件が形成されるため、過酸化水素感受性細胞でも増殖できるようになる。そこで本研究では、仮説「低温下で誘導された青枯病菌の過酸化水素感受性細胞は、ストレスから解放されること、すなわち常温に移されることによって過酸化水素感受性状態から復帰する」を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 青枯病菌を滅菌水に懸濁し、低温ストレス(5˚C)下に静置すると、CPG培地(標準培地:過酸化水素を含む)上で増殖できる細胞数は低下し、約80日後には分離されなくなる。一方、SP添加CPG培地(SP培地:過酸化水素量が低下した、あるいは含まない)ではその後も検出される(図1)。したがって、図1の期間Iでは、SP培地上で増殖できる細胞は過酸化水素感受性細胞のみとなる。期間Iに、懸濁液の一部を常温(25˚C)下に移すと、標準培地で増殖できる細胞数が初期9時間後まで急速に増加(図2A; 2B 傾き u )するが、その後、48時間後までの増加は緩やかになる(図2A; 2B 傾き v)。一方、懸濁液の除菌上清に新鮮な青枯病菌を接種し、25˚C下に静置した場合の増殖も緩やかである(図3 傾き w )。これらの傾きの大きさの間には w = v < u の関係が成り立つことから、初期9時間における標準培地上で増殖できる細胞数の急増は、わずかに存在していた標準培地上で増殖できる細胞が増殖したのではなく、少なくとも一部の過酸化水素感受性状態の細胞が一斉に本状態から復帰したことを示唆する。
2. 青枯病菌の選択培地(改変SMSA培地)において、低温ストレス下の本菌の分離量を最も向上させるSPの濃度は5 g/lである。

[成果の活用面・留意点]
1. 青枯病菌を検出する際には、過酸化水素感受性細胞が存在する可能性を考慮する。
2. 他の細菌においても同様な仮説の検証と選択培地の改良ができる可能性がある。

[具体的データ]
図1 低温ストレス下における青枯病菌の細胞数の変化 図3 新鮮な青枯病菌の増殖
図2 低温ストレス解放後の細胞数の変化
[その他]
研究課題名:病害虫の侵入・定着・まん延を阻止するための高精度検出・同定法の開発
中課題整理番号:521b
予算区分:科研費
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:今ア伊織、中保一浩
発表論文等: 1) Imazaki, I., and Nakaho K. (2009) J. Gen. Plant Pathol. 75(3): 213–226
2) Imazaki, I., and Nakaho K. (2010) J. Gen. Plant Pathol. 76(1): 52–61

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