土壌の腐植化度とダイズの収量の関係


[要約]
ダイズの収量は土壌の腐植化度の影響を強く受けており、土壌の腐植化度が低い圃場では収量が高い傾向にある。

[キーワード]ダイズ、腐植化度、収量、MI、メラニックインデックス

[担当]石川農総研・資源加工研究部・生物資源グループ、育種栽培部・作物栽培グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
近年、石川県下において水田作ダイズの収量が低下傾向にあり、この要因としてブロックロ−テーションの推進にともなう土壌有機物含有量の減少が指摘されているが、これに加えて土壌有機物の形態が関与していることも想定される。
 そこで、石川県の主要品種「エンレイ」を対象とし、現地実態調査を通じて土壌有機物の量、形態と収量の関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 土壌の全炭素量・MI値(メラニックインデックス)・PI値・施肥窒素量と最大繁茂期(8月中〜下旬)における葉中窒素含有量・収量との関係をみると、第1主成分において葉中窒素含有量・収量・MI値の負荷量が大きく、MI値は収量と関連深い項目であると考えられる(表2)。
2. MI値と収量との間には相関関係が認められ、MI値が高い、すなわち土壌の腐植化度が低いと考えられる圃場では収量が高い傾向にある(図1)。また、葉中窒素含有量についても同様である(図2)。
3. 以上より、土壌の腐植化度が低い圃場ではダイズの窒素栄養条件が緩和され、収量が高くなる傾向にある。

[成果の活用面・留意点]
1. 調査対象は灰色低地土水田、及び排水改良を実施したグライ土水田である。
2. 土壌有機物は生物分解や化学変化を受け、徐々に難分解性となる。腐植化度は、これを客観的に表現する指標である。
3. MI値、PI値の測定法は、山本・本名・内海 土肥誌 71 82-82(2000)に準じる。MI値は土壌のアルカリ抽出液の波長450nm及び520nmにおける吸光度の比、PI値は波長600nm及び610nmにおける吸光度の比で、これらの値は腐植酸型の判別指標として用いられる。MI値が高い土壌は腐植化度が低い傾向にある。

[具体的データ]
表1 各年次の収量及び最大繁茂期の葉中窒素含有 表2 主成分分析による土壌・施肥要因とダイズの収量との関係(主成分負荷量)

図1 MI値とダイズの収量指数の関係 図2 MI値と葉中窒素含有量の関係
[その他]
研究課題名:大豆の生産力向上技術の確立、現場ニーズ把握と新技術の迅速な普及のための調査事業
予算区分:県単、受託(2007年度)
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:梅本英之、宇野史生、畑中博英、塚本昇市、北田敬宇

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