個性的なサツマイモ新品種の導入と販売を支援するためのマニュアル


[要約]
農協の営農指導員や販売の実務担当者等が個性的なサツマイモ新品種導入をはかる際に用いるマニュアルである。本マニュアルの利用によってニッチマーケティングの視点から品種と販売先を選定し、利用提案の伝達や生産と販売戦略との調和をはかれる。

[キーワード]サツマイモ、新品種、ニッチマーケティング、新商品開発、提案型営業

[担当]中央農研・マーケティング研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8481
[区分]共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
消費の多様化に対応して個性的な新品種が開発される一方、珍しければ高く売れるとの誤解に基づいた新品種導入では、ニッチ商品として販売対象の絞り込みや品種の説明が不十分なため、新品種の販売が直売所など一部の小規模な流通にとどまっている。
そこで、個性的な新品種のモデルコンソーシアムに参加して事業活動を観察し、その結果から取引条件、製品開発、販売促進などに関する対策を提案して、それによる取引の開始、継続・拡大等の有無によって有効性を確認し、他品種への応用が可能なように品種特性に応じた販売戦略策定および販売の方法と手順を整理したマニュアルを作成する。

[成果の内容・特徴]
1. 本マニュアルはI各章の目的と対象者を示す利用案内、II品種特性と価値の把握、III品種と販売先の選定、IV利用提案の策定と伝達、V販売戦略と生産の調和、VI担当者間の協調関係構築の6章で構成されている(図1)。
2. 珍しければ高く売れるとの誤解に基づく品種選定を避けるため、図2のように(1)品種特性の把握、(2)特性を活かす利用方法、(3)利用用途にあった販売先、(4)魅力的な利用提案の作成、(5)物流の調整、(6)産地組織の対応能力、以上の手順に従えば各品種に応じた販売戦略を策定できる(図1・IIの内容)。
3. (1)需要の大きさ、(2)「ベニアズマ」などの主流品種との代替関係、(3)特徴が共通する既存品種との競合関係を表1のようにマニュアル利用者が把握しやすい情報を整理すれば、取引が期待できそうな販売先を絞り込める(図1・IIIの内容)。例示品種は主流品種との代替関係の程度が異なる3品種なので、他の新品種導入を検討する際は主流品種との代替関係が近い例示品種と置き換えれば参考にできる。
4. 利用提案策定の方法(図1・IVの内容)は、主流品種との代替関係が強い場合なら品種では味や食感の好みや用途ごとの適性で判断できる。また、消費者までの提案の伝達方法も例示している。
5. 個性的な新品種は小売向けの規格外品の販売が難しかったり、特定の業務用途しか需要がなかったりするため、需要に合わせて生産を調整する必要がある。そのため、Vで生産と販売の調整方法について解説している(図1・Vの内容)。
6. 業務用実需者が新品種で付加価値を高めたり、小売店等での消費者への説明が確保されたりするには、実需者や流通業者との農商工連携だけでなく、農協内の部門間調整が必要とされる問題点とその対策を解説している(図1・VIの内容)。

[成果の活用面・留意点]
1. 既に産地が形成されている地域での新品種導入に限らず、新たに産地化をはかろうとする地域で農商工連携による新商品開発をすすめる際にも活用できる。
2. マニュアルは「サツマイモ新品種導入の手引き−農産物ニッチマーケティングのすすめ−」と題して冊子化し、PDF版は以下のURLから無償でダウンロードできる。   http://narc.naro.affrc.go.jp/soshiki/mrt/sweetpotato.pdf

[具体的データ]

(森尾昭文)

[その他]
研究課題名:消費者・実需者ニーズを重視した農産物マーケティング手法の開発
中課題整理番号:311i
予算区分:委託プロ(加工)、科研費
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:森尾昭文、河野恵伸、佐藤和憲

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