水稲におけるドリフト低減ノズルを用いた濃厚少量散布の付着特性


[要約]
水稲において、ドリフト低減ノズルを装備したブームスプレーヤによる濃厚少量散布は、慣行散布同等の農薬付着量が確保できる。散布作業方法は、高速・高圧散布を行うと付着が良い。斑点米カメムシ類に対する防除効果は慣行散布と差が無い。

[キーワード]水稲、ドリフト低減ノズル、濃厚少量散布、付着特性、防除効果

[担当]静岡県農林技術研究所・経営・生産システム科
[代表連絡先]電話:0538-36-1551
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年,水田の防除における作業の効率化と農薬飛散防止のため,散布量25 L/10aの濃厚少量散布に対応したドリフト低減ノズルが市販化されている。ドリフト低減ノズルは噴霧粒径が200〜500μmと慣行比3〜8倍大きく、かつ濃厚少量散布の散布量は慣行比1/5程度である。このため付着特性は慣行散布と大きく異なる事が予想されるが、水稲に対する付着や防除効果に関する情報は少ない。ここでは水田防除作業を対象に、同ノズルによる濃厚少量散布の付着特性と防除効果、および良好な付着性能を確保するための作業方法を明らかにし、普及のための資料とする。

[成果の内容・特徴]
1. 噴霧粒径320〜484 μmのドリフト低減ノズルを装着したブームスプレーヤで25 L/10aの濃厚少量散布を行った場合、生育後期(糊熟期)の水稲に対する農薬成分付着量は、ノズル型式により差違があるものの、群落内の全ての部位で慣行散布と同等量が確保可能である。付着量のばらつきは,慣行散布よりも大きい傾向がある(図1)。
2. 同ノズルでの濃厚少量散布による噴霧の被覆面積率は、群落下部1.7%〜群落上部24.3%である。慣行散布での同25.7%〜50.7%に比較すると低い(図2)。
3. 散布作業時の作業速度と散布圧力は、高速・高圧(0.95 m/s, 1.5 MPa)で作業すると噴霧被覆面積率が高くなり、ばらつきも小さい。一方、低速・低圧(0.56 m/s, 0.5 MPa)で作業すると群落上部の被覆面積率が劣る(図3)。ノズルの適正使用圧力範囲内で、高速・高圧での散布作業が推奨される。
4. 出穂後9日の斑点米カメムシ類に対する防除効果は、慣行散布と同等である(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 斑点米カメムシ類以外の防除効果については未確認である。
2. 濃厚少量散布は、専用の登録薬剤を速度連動機構付きブームスプレーヤで散布する。
3. 本成果の付着特性データは,全て風速2m以下の晴天日に採取したものである。

[具体的データ]
図1 水稲の部位別農薬付着量
図2 水稲に対する噴霧の被覆面積率 図3 作業速度と散布圧力が水稲に対する被覆面積率に与える影響
表1 斑点米カメムシ類に対する防除効果(20回振り平均頭数)

(山根 俊)

[その他]
研究課題名:大規模栽培成立に向けた濃厚少量散布技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2008~2010年
研究担当者:山根 俊、大村和宏

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