破砕した籾サイレージは泌乳牛に給与する配合飼料と40%まで置換えできる


[要約]
破砕して調製した籾サイレージを、乾物換算で泌乳牛に給与する市販配合飼料の20%または40%と置き換え大豆粕で粗蛋白質含量低下を補正すれば、泌乳中後期牛の飼料摂取量、乳生産、第一胃内容液・血液性状に影響しない。
[キーワード]泌乳牛、籾サイレージ、乳生産

[担当]千葉畜総研・乳牛肉牛研究室
[代表連絡先]電話:043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
2007年以降の飼料価格の高騰を契機に、飼料用米は地域自給穀物として畜産農家の関心が高まっており、本県でも2010年には約500haに拡大する見通しである。未乾燥の籾米をトランスバック等に密閉貯蔵して乳酸発酵させる籾サイレージは、水稲農家における乾燥・籾摺り工程が不要なため安価に調達できる可能性があること、籾殻に粗飼料と同程度の反すう刺激効果が認められていること、牛は発酵した飼料を好むことなどから、牛への給与に適した形態と考えられる。そこで、泌乳中後期牛6頭を用いて籾サイレージ給与試験を行い、その給与効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 泌乳中後期のホルスタイン種経産牛6頭を用い、1期2週間(予備期11日、採材期3日)の3×3ラテン方格法により、籾サイレージを給与せず当場慣行TMRに類似したメニューを給与する対照区、乾物換算で泌乳牛用市販配合飼料の20%(20%区)または40%(40%区)を籾サイレージと代替する3試験区を設定し、泌乳試験を実施。
2. 籾サイレージの調製は、完熟期に収穫した主食用品種の籾米を破砕し、籾米重量の1%相当の廃糖蜜を35Lの水で希釈した液を加えて混合し、ポリ袋内装の1m3容トランスバッグに入れて2ヶ月間密閉貯蔵。籾サイレージの粒度分布(籾殻含む)は、原物重量比で2mm以上が67%、2mm未満1mm以上が24%、1mm未満が9%。
3. 飼料の配合割合と成分値は表1のとおりで、加水混合したTMR形態で翌日に若干の食べ残しが出る量を給与。採材期の3日間には飼料乾物摂取量、乳量、乳成分、咀嚼行動の調査を行い、各期の最終日には朝の給餌4時間後に第一胃内容液及び血液を採取。
4. 調製された籾サイレージは、水分28%、pH3.9で、新鮮物中に乳酸1.2%、酢酸0.12%を含み、酪酸は検出されず発酵品質は良好である。
5. 籾サイレージを配合飼料の一部と置き換えて給与しても、飼料乾物摂取量、乳量、乳成分率に影響が無く、採食時間、反すう時間にも影響しない(表2)。
6. 籾サイレージの給与は、第一胃内容液中の各VFAのモル比率、酢酸/プロピオン酸比、アンモニア態窒素濃度(表3)、血漿中のグルコース、中性脂肪、総コレステロール、総蛋白、アルブミン、GOT、GTP、BUN、無機リン、カルシウム濃度に影響を与えない。第一胃内容液中の総VFA濃度については、籾サイレージの給与量が増えるにつれて低下する傾向が認められ、40%区では対照区に比べて有意に低い。

[成果の活用面・留意点]
1. 籾米を破砕してサイレージに調製すれば、泌乳牛の飼料として活用できる。
2. 全粒の籾米では消化率が低いため、サイレージ調製時もしくは給与前に破砕等の加工が必要である。なお、籾サイレージの消化率については2010年度試験で測定予定。
3. 籾米は粗蛋白質がやや低く、また、籾米の20%程度を占める籾殻はほとんど消化されないためTDN含量は最大でも80%程度である。給与飼料の成分濃度を泌乳牛の要求量にあわせて調整する必要がある。

[具体的データ]

(千葉県畜産総合研究センター)

[その他]
研究課題名:泌乳牛への飼料米ソフトグレーンサイレージ給与効果の検証
予算区分:県単
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:西山厚志、石崎重信
発表論文等:千葉畜総研 研究報告書 第10号(2010)

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