傾斜をつけた戻し堆肥の牛床は利用率が高く牛体の汚れが少ない


[要約]
フリーストール牛舎において、牛床敷料に良質な戻し堆肥を使用し、10cm程度の量で傾斜をつけると、山砂より通路での横臥が減り、牛体衛生スコアが改善した。

[キーワード]牛体衛生スコア、戻し堆肥、大腸菌群数

[担当]茨城畜セ・酪農研究室
[代表連絡先]電話:0299-43-3333
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、乳中の体細胞数と牛体の汚れに関する相関関係が何人かの研究者によって報告されており、牛体の汚れを防止する管理が体細胞数を減少させるための一方策と考えられている。フリーストール牛舎は乳牛の行動が自由なため、管理者が牛体の汚れを制御することは困難である。そのため、牛体が汚れやすい通路での横臥を減らしストール内で横臥させることが管理上重要なポイントといわれている。しかし、牛床の材質や形状はストールの利用性を左右する要因と考えられるが、牛体や牛床の衛生状態にどの程度影響するかを実証的な数値として示した報告は少ない。そこで、県内で広く利用されている牛床資材である山砂と戻し堆肥について、牛床に傾斜をつけることによる効果を検討した。

[成果の内容・特徴]
1. 搾乳牛27〜32頭収容されているストール数48の対頭2列式フリーストール牛舎において、4種類の牛床条件について21日間の試験を実施する。試験間の予備期間は14日、試験期間中の牛床調整はふんの除去のみとし、通路敷料は1回/日ローダーで交換する。
2. 敷料入れ替え直後(0day)では、戻し堆肥・傾斜区の牛床利用率、横臥率がともに極めて高く、通路横臥牛はみられない(表1)。試験14日目においても、牛床横臥率は戻し堆肥・傾斜区が最も高いが、21日目には、牛床の凹凸や堅さに変化の少ない山砂・平坦区以外の3区で牛床利用性が低下する。
3. 試験14日目の牛体衛生スコア(5段階:1きれい〜5汚い)では、戻し堆肥・傾斜区が下腹部及び乳房で戻し堆肥・平坦区よりも有意に低く、山砂の2区よりも低くなる傾向がみられる(表2)。21日目では、14日目でみられたスコアの差は小さくなる。
4. 目視できれいな部分と汚れている部分の牛床敷料中の大腸菌群数は、戻し堆肥では差が大きい。山砂では差が認められず、牛床の汚れ具合の判断は、戻し堆肥では比較的容易であるが、山砂では極めて困難である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 戻し堆肥を牛床敷料として利用する際に、傾斜をつけることの衛生面における有意性を示す結果であるが、2週間程度で補充・入れ替えを実施する必要性も示唆されている。
2. 2009年5〜9月に単年度で実施した結果であり、牛床利用率は、最初に実施した山砂・平坦区以外の3区全てにおいて暑熱による影響を大きく受けている。
3. 本試験で供した戻し堆肥は、30日以上発酵処理をした水分60%以下のものである。供試敷料(山砂・戻し堆肥)中に大腸菌群は存在していない。
4. 本成果では、乳中の体細胞数と牛体衛生スコアとの間に有意な相関は認められていない。

[具体的データ]
図1 牛床敷料の量の検討
表1 敷き料入れ替え後0、14、21日目における牛床利用状況
表2 14日目における牛体衛生スコア
表3 牛床敷料中の大腸菌群数(21日目)

(茨城県畜産センター)

[その他]
研究課題名:フリーストールにおける乳牛の衛生的管理方法の検討
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:脇本 亘、本谷 直、塚本永和

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