超音波画像診断を用いた卵巣観察に基づく牛体内胚生産能力の推定


[要約]
]超音波画像診断による発情周期の任意の時期の卵胞数と体内胚生産数及び正常胚数には、有意な相関が認められ、供胚牛(ドナー牛)の体内胚生産能力を推定することが可能である。

[キーワード]超音波画像診断、受精卵移植

[担当]栃木酪試・繁殖技術研究室
[代表連絡先]電話:0287-36-0230
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
超音波画像診断技術の進歩により、牛の発情周期における卵胞ウェーブの動態と発情発現機序が明らかになってきた。また、卵胞ウェーブで出現する卵胞数には個体差が認められることから、過剰排卵処置における卵胞刺激ホルモン(FSH)に対する感受性との関係が推察される。このことから、超音波画像診断による卵胞等の所見と過剰排卵処置による体内胚生産成績との相関について調査し、ドナー牛の体内胚生産能力を推定する手法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. ホルスタイン種経産牛を対象とし、発情周期及び妊娠期の任意の時期に、経腟採卵〔OPU〕仕様腟挿入型プローブを装着した超音波画像診断装置により、1頭当たり1〜2回、卵巣における卵胞等の所見を調査する。調査項目は、卵胞数(大型卵胞〔8mm以上〕、中型卵胞〔5-8mm〕、小型卵胞〔5mm以下〕)及び卵巣の長径・短径とする。体内胚生産は、分娩後3カ月以降の時期に、1頭当たり2〜7回、FSH総量(未経産:18〜20AU、1産:34〜36AU、2産以降38〜44AU)、3〜4日間漸減投与の常法で過剰排卵処置を実施、人工授精後7日目に子宮内灌流により体内胚を採取する。
2. 超音波画像診断による卵胞数(左右卵巣合計)は、大型卵胞数1.3±1.0個(±標準偏差)、中型卵胞数8.0±3.9個、小型卵胞数13.1±7.2個、卵胞総数22.4±9.9個であった。卵胞総数は、最大値38.5±1.5個、最小値7.5±0.5個であり、顕著な個体差が認められる。
3. 体内胚生産成績は、採胚数8.8±6.2個、正常胚数4.1±2.9個であった。採胚数は、最大値21.7±7.1個、最小値1.0±1.0個であり、超音波画像診断所見と同様に顕著な個体差が認められる。
4. 超音波画像診断による卵胞総数と採胚数及び正常胚数には、有意な相関[ 相関係数:卵胞総数⇔採胚数0.75( P < 0.01 )、卵胞総数⇔正常胚数0.62 ( P < 0.01 ) ]が認められ、ドナー牛の体内胚生産能力の推定に応用できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 超音波画像診断によりあらかじめ体内胚生産数が予測できることから、採胚不適牛を排除することや生産コストに見合った採胚が可能となる。
2. 超音波画像診断装置による卵巣観察は、妊娠診断用の直腸挿入型プローブでも可能であるが、腟挿入型プローブを使用することでより詳細(小型卵胞数の所見等)な所見を得ることができる。

[具体的データ]

(栃木酪試)

[その他]
研究課題名:経腟採卵(OPU)技術を用いた効率的な乳用牛改良システムの開発
予算区分:県単
研究期間:2005〜2010年度
研究担当者:川野辺章夫、新楽和孝、星 一美、稲葉浩子

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