黒毛和種枝肉重量QTL(CW-2)の効果検証


[要約]
黒毛和種枝肉重量QTL(CW-2)の責任候補遺伝子であるNCAPGは、黒毛和種肥育牛の枝肉重量に影響を及ぼしている。NCAPGは枝肉重量形質に優れた種畜の選抜に有効な遺伝子マーカーとなり得る。

[キーワード]]黒毛和種、枝肉重量QTL、CW-2NCAPG

[担当]岐阜県畜産研・飛騨牛研究部
[代表連絡先]電話:0577-68-2226
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜(うち育種・繁殖部門))
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
黒毛和種枝肉重量に関するQTL領域として報告されているCW-2は、特定種雄牛の大規模家系を用いたQTL解析で特定されている。その責任候補遺伝子としてNCAPGが特定され、エキソン9のSNPの変異(NCAPG c.1326T>G)を検出することによりCW-2の遺伝子診断が可能である。今回、岐阜県内産の肥育牛において枝肉形質に対するCW-2の効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. PCR-RFLP法でCW-2の責任候補SNP(NCAPG c.1326T>G)の診断が可能である(図1)。   Gアレル、Tアレルであり、遺伝子型GG型、GT型、TT型に診断される。
2. 特定枝肉共進会(2009年12月開催、去勢)出品牛におけるNCAPG c.1326T>G遺伝子型別はGG型2頭(1.8%)、GT型49頭(45.0%)、TT型58頭(53.2%)、遺伝子頻度はGアレル0.243、Tアレル0.757である(表1)。
3. 特定共進会出品牛の遺伝子型別枝肉形質は、GT型のと殺前体重759.8kg、枝肉重量491.8kg、TT型は716.6kg、467.5kgであり、GT型が有意に高い(p<0.01)。その他の形質には有意差は認められない(表1)。
4. NCAPG c.1326T>G ヘテロ型種雄牛産子の肥育牛(去勢)におけるNCAPG c.1326T>G遺伝子型別はGG型9頭(3.8%)、GT型124頭(52.6%)、TT型103頭(43.6%)、遺伝子頻度はGアレル0.30、Tアレル0.70である(表2)。
5. 枝肉重量QTL(CW-2)の責任候補遺伝子、NCAPG c.1326T>G 優良アレルを保有すると、枝肉重量、と殺前体重が向上する。
6. NCAPG c.1326T>G ヘテロ型種雄牛産子の肥育牛における遺伝子型別枝肉形質は、GT型の枝肉重量475.3kg、ロース芯面積55.9cm2、TT型456.7kg、53.7 cm2であり、GT型が有意に高い。その他の形質には有意差は認められない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 種雄牛や繁殖雌牛においてNCAPG c.1326T>G 優良アレルの有無で枝肉重量の改良  が期待される。
2. NCAPG c.1326T>G 枝肉重量に影響する優良アレルは、脂肪交雑など他の重要な経済形質との相関が不明であるため、実際の種畜の選抜についてはさらに検討する必要がある。

[具体的データ]
図1 NCAPG c.1326T>G 遺伝子診断
表1 特定共進会出品牛の遺伝子型別枝肉形質
表2  NCAPG c.1326T>Gヘテロ型種雄牛産子の肥育牛における遺伝子型別枝肉形質

(岐阜県畜産研)

[その他]
研究課題名:飛騨牛の生産性を阻害する遺伝子の解明
予算区分:県単
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:小林直彦、松橋珠子、平野貴(畜技協動物遺伝研)、 高須賀晶子(畜技協動物遺伝研)、杉本喜憲(畜技協動物遺伝研)

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