飼料用米多給による黒毛和種去勢牛肥育技術と枝肉成績
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[要約] |
飼料用籾米を粉砕し原物として50%配合した飼料により黒毛和種去勢牛を肥育してもルーメンアシドーシス傾向は認められず、血中ビタミンA濃度の調整も問題なく、慣行法と同様に肥育可能であり、遜色ない肉質が得られることが示唆される。 |
[キーワード]飼料用米、肥育、ルーメンアシドーシス、ビタミンA、枝肉成績 |

[担当]岐阜県畜産研・飛騨牛研究部
[代表連絡先]電話:0577-68-2226
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜(うち栄養・生理部門))
[分類]技術・参考 |
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[背景・ねらい] |
濃厚飼料の大部分を輸入とうもろこし等の外国産穀物に依存したこれまでの肉用牛肥育において、飼料用米の多給技術を開発することにより、通常肥育と遜色ない牛肉生産を実証し、飼料自給率の向上を図ることを目的としている。 これまでに、とうもろこしの1/2相当量を飼料用米に代替し、配合率30%とした飼料による肥育試験により発育性、枝肉重量、脂肪交雑には差が無く、血中ビタミンA濃度にも影響しないことがわかっている。今回は更に配合割合を高め、飼料用米配合率50%飼料による肥育試験を実施し、発育性、ルーメン内容液pH、血中ビタミンA濃度、枝肉成績について検討する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
籾のまま粉砕加工(4mmメッシュ)した飼料用米を原物で30%(30%区)および50%(50%区)配合する2区を設定し、粗蛋白質が12%(原物)となるようトウモロコシ、脱皮大麦、大豆粕、フスマ、DDGSを用いて飼料設計している。各区6頭の黒毛和種去勢牛を用いて導入後1ヶ月間の馴致期間を除く全期間に給与を行い肥育試験を実施している。試験牛への飼料給与については、粗飼料給与から1時間後に配合飼料を給与している。 |
2. |
肥育期間中の体重の推移は両区の間に差は認められず、肥育終了時まで同様な発育性を示している(図1)。濃厚飼料、粗飼料摂取量の平均は30%区で4166.7±303.3kgおよび908.7±20.3kg、50%区で4124.8±248.7kgおよび925.8±125.2kgであり両区に差は無い。
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3. |
ルーメン内容液のpHは両区とも配合飼料摂取2時間後に最低値を示し、その後は時間の経過とともに上昇している。区間に差はなく同様な推移を示しており、ルーメンアシドーシスの傾向も認められない(図2)。測定は経口採取により実施したためやや高値になったと思われる。測定時の試験牛は14ヶ月齢である。 |
4. |
血中ビタミンA濃度は両区とも13ヶ月齢時に最高値となりその後減少している。全期間を通して区間に差は無く同様な推移を示しており、飼料用米を多給してもビタミンAコントロールに問題は無い(図3)。 |
5. |
枝肉成績における全ての項目において両区の間に有意な差は認められず、飼料用米を多給しても慣行法と遜色のない肉質の牛肉生産が可能であることが示唆される(表1)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
黒毛和種肥育牛における飼料用米利用について、基礎データとして活用できる。
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2. |
30%区の1頭が21ヶ月齢時に死亡したため最終的に5頭の成績となっている。 |
3. |
30%区と50%区との間に発育性、枝肉重量とも差はないが一般の通常肥育と比較するとやや小さく、増体面に関しての検討が必要である。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:飼料用米の肥育全期間給与による高品質和牛肉生産技術の開発
予算区分:委託プロ(国産飼料プロ3系)
研究期間:2010〜2014年度
研究担当者:大田哲也、丸山 新、坂口慎一
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