発酵TMRは貯蔵中に大腸菌群・糸状菌を検出限界以下にできる


[要約]
細断型ロールベーラを用いて輸入乾草主体のTMRを調製し、貯蔵・発酵させると、原料由来の大腸菌群は28日間、糸状菌は56日間で検出限界以下にまで低減できる。

[キーワード]発酵TMR、大腸菌群、糸状菌

[担当]新潟農総研・畜産研・生産・環境科
[代表連絡先]電話:0256-46-3103
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、自給粗飼料や食品製造副産物等を多用したTMRの利用が注目されている。また、TMRは嫌気発酵により、長期保存が可能、低・未利用資源の活用促進、嗜好性の向上、開封後の好気的変敗防止といったメリットがあるが、実際に貯蔵中の微生物数の変化を経時的に調査した事例は少ない。
  そこで、細断型ロールベーラを用いて調製した輸入乾草主体のTMRロールベールサイレージを、貯蔵期間2ヵ月までの微生物数の変化を経時的に調査し、発酵TMRの品質を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. TMRは2010年4月19日に調製(日中最高気温18℃)、飼料原料の乾物混合割合は、乳牛用配合飼料60%、チモシー乾草25%、アルファルファヘイキューブ15%、水分含量40%に加水した。加水に使用した水以外のすべての飼料原料中から、大腸菌群、糸状菌、酵母が検出された()。
2. 発酵TMR中の乳酸菌数は28日後に1.5×1011CFU/g FMに達する。大腸菌群は28日後、糸状菌は56日後に検出限界以下(<102CFU/g FM)になる(図1)。
3. 発酵TMR中のpH低下、乳酸生成は7日後から28日後まで急激に進み、その後、緩やかになる(図2)。
4. 調査した24個のロールの全てからプロピオン酸、酪酸、吉草酸は検出されず、VBN/TN%は5以下、V-スコアは99以上であった。
5. 外気温15℃程度で調製した発酵TMRは野外で60日程度の貯蔵をすれば、飼料中の大腸菌群・糸状菌を検出限界以下にまで低減できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 発酵TMR の品質管理に活用できる。
2. 細断型ロールベーラを用いて調製した発酵TMRでの結果であり、フレコンバック発酵TMRについては検討していない。
3. 本成果は2010年4月19日に調製した結果の一事例である。異なる条件、他の時期や季節変動による発酵品質への影響も検討する必要がある。

[具体的データ]
表 飼料原料中の微生物数(CFU/g FM、N.D.;検出限界以下)
図1 発酵TMR中の微生物数の推移
図2 発酵TMR中の有機酸含量とpHの推移

(新潟県農業総合研究所)

[その他]
研究課題名:稲・麦WCS、飼料用米および生米ぬかを高度利用した牛乳の生産技術開発
予算区分:委託プロ(国産飼料プロ3系)
研究期間:2010〜2014年度
研究担当者:小橋有里、関 誠、島津是之、高橋英太

目次へ戻る