生稲わらサイレージ・生米ぬか混合発酵TMRの肥育中期からの給与法


[要約]
黒毛和種去勢牛に肥育中・後期を通して生稲わらサイレージや生米ぬかを混合した発酵TMRを給与すると、慣行法に比較して採食性や増体は良好であり、同等の枝肉成績が得られるが、生米ぬか10%の混合により尿石症の発生が多くなる。

[キーワード]生稲わらサイレージ、生米ぬか、発酵TMR、黒毛和種去勢牛、肥育中後期

[担当]富山畜研・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、肉用牛の飼料として発酵TMRが注目されており、生稲わらや未脱脂米ぬか(生米ぬか)等の食用米副産物を発酵TMRの材料として利用することは、飼料自給率向上の観点から有望である。この食用米副産物を混合した発酵TMRを肥育後期の黒毛和種去勢牛に給与すると、慣行法よりも採食性や増体が優れ、枝肉成績にも影響はないが、血中ビタミンA濃度が高く推移することを明らかにしている。しかし、脂肪交雑向上のためにビタミンAコントロールが必要な肥育中期から給与した場合の肥育成績については不明である。そこで、生稲わらサイレージや生米ぬかを混合した発酵TMRを肥育中・後期(14〜26カ月齢)の黒毛和種去勢牛へ長期給与した場合の肥育成績や血液性状等について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 肥育中期(14〜19カ月齢)において、生稲わらサイレージの混合割合を変えた2種類の発酵TMRを給与し、市販配合飼料と乾燥稲わらを分離給与する慣行区と比較した。発酵TMR中のβ‐カロテン含量(乾物中)は、生稲わらサイレージを10%混合したものが1.2mg/kg、20%混合したものが3.7mg/kgであり、慣行区の0.6 mg/kgよりも高い(表1)。
2. 慣行区では、肥育後期に血漿中ビタミンA濃度が50IU/dL以下に低下し、欠乏症状が認められたため、ビタミンA製剤を経口投与したが、発酵TMRの給与の場合、当該製剤の投与は行わなかった。また、発酵TMRへの生稲わらサイレージの混合割合を変えても、血漿中ビタミンA濃度は100IU/dL以上で推移する(図1)。
3. 肥育中期における発酵TMR区の飼料摂取量や日増体量は、慣行区よりも大きい(表2)。
4. 肥育中・後期に発酵TMRを給与すると、慣行区より枝肉重量が大きく、皮下脂肪が厚くなる。一方、脂肪交雑(B.M.S.No.)や脂肪色(B.F.S.No.)に慣行区と発酵TMR区との差はない(表3)。
5. 肥育中期から生米ぬかを乾物中10%混合した発酵TMRを給与すると、慣行区より尿石症の発生頭数が多くなる(表1、表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 生稲わらサイレージと生米ぬかは黒毛和種去勢牛向け発酵TMRの調製に活用できる。
2. 肥育後期(20〜26カ月齢)に生米ぬかを乾物中10%混合した発酵TMRを給与しても尿石症の発生はないが(2008年度成果情報)、肥育中期から出荷までの長期間にわたり給与すると、尿石症の発生頻度が高まるため、発酵TMR調製時には、生米ぬかの混合量や給与期間について留意する必要がある。

[具体的データ]

(富山畜研)

[その他]
研究課題名:生稲わらサイレージおよび食用米副産物等を活用した黒毛和種去勢牛向け発酵TMR調製・給与技術の開発
予算区分:委託プロ(えさプロ)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:高平寧子、金谷千津子、吉野英治、廣瀬富雄、丸山富美子

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