乳牛の分娩14日目の血液生化学性状から発情回帰日数が推測可能である


[要約]
分娩後14日目の血中尿素窒素(BUN)、総コレステロール(TCHO)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)から発情回帰日数が予測可能であり、分析値をスコア化し合計した「発情回帰指数」は簡易診断法として有効。

[キーワード]分娩後初回発情回帰日数、BUN、TCHO、GOT、発情回帰指数

[担当]福井畜試・家畜研究部・肉牛バイテク研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
乳牛の泌乳能力は年々向上しているが、分娩間隔が長くなり収益性が低下し酪農経営を圧迫している。
  そこで、分娩後の初回発情回帰日数と血液生化学分析値との重回帰分析を行い、分娩後の繁殖機能回復状況を診断する簡易診断法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 県内の酪農家(1戸)で飼養されているホルスタイン種38頭を対象に、分娩前30日、分娩後7日、14日、20日、40日目に繁殖機能検査および血液生化学検査を実施して得られた成果である。
2. 分娩後60日以内に発情回帰と診断した早期回帰牛群と61日以降の回帰遅延牛群で血液生化学性状を比較する。
3. 回帰遅延牛群は早期回帰牛群に対し、分娩後7日目、14日目のBUNおよびTCHOが低く、GOTが高い傾向にある(表1)。
4. 分娩後14日目のBUN、TCHOおよびGOTを説明変数、初回発情回帰日数を目的変数とした重回帰式、初回発情回帰日数=105.9−5.2×BUN−0.3×TCHO+0.6×GOT(r =0.70、P<0.01)が得られている(図1)。
5. 分娩後14日目のBUN、TCHO、GOTについて、それぞれの検査値を0点から4点にスコア化し、その合計値を「発情回帰指数」とする。「発情回帰指数」と実際の発情回帰日数には重回帰式と同等の相関(r=0.68、P<0.01)が認められる(図2)。
6. 別の酪農家2戸(24頭)で「発情回帰指数」を実証試験した結果、指数5未満と判定した牛の平均発情回帰日数は52.4日で、11頭中8頭(73%)が60日以内に発情が回帰し、指数5以上と判定した牛の平均発情回帰日数は62.5日で、13頭中8頭(62%)が発情回帰に61日以上を要する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「発情回帰指数」を利用することで、分娩後の初回発情回帰日数の推測ができ、早期処置や飼養管理改善による繁殖機能の早期改善を図ることで分娩間隔の短縮が期待できる。
2. 「発情回帰指数」は、5点以上で初回発情回帰が遅れる確率が高い。
3. 農家の発情発見技術により、判定結果と異なる可能性がある。

[具体的データ]

(竹内隆泰)

[その他]
研究課題名:乳牛の繁殖機能診断技術の確立
予算区分:交付金(地域科学技術振興研究事業)
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:竹内隆泰、小林崇之、近藤守人

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