生体内卵子吸引-体外受精(OPU-IVF)技術による妊娠牛からの胚作出


[要約]
妊娠牛に対するOPU-IVF技術は妊娠維持に影響はなく、これまで活用されていない妊娠時期での新たな胚作出を可能とする。また、妊娠期の卵胞数は未経産牛と泌乳経産牛とに差があり、粗濃比等の栄養管理、産歴等との関連が示唆される。

[キーワード]妊娠牛、OPU-IVF技術、胚作出、卵胞数

[担当]新潟農総研・畜産研・繁殖工学科
[代表連絡先]電話:0256-46-3103
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
乳牛は高泌乳化が進むものの、分娩間隔は長期化し生涯産子数は減少傾向にある。過剰排卵処理技術は空胎牛を対象に実施されている(従来法)が、高泌乳牛のメス産子を増加させ、酪農の生産効率を向上させるため、OPU-IVF技術を用いてこれまで利用のされていない妊娠牛からの胚作出技術を実用化し、従来法に加えて胚の確保総数を増加させる。

[成果の内容・特徴]
1. OPUの適用妊娠日齢は両側の卵巣保持が可能な期間とし、概ね1週間隔で実施する。
2. 妊娠牛へのOPUは約100日齢まで適用できる。ただし、適用最終妊娠日齢は個体差が大きい(表1)。
3. OPU回数は平均6回、最多OPU回数は9回、全頭に流産の発生はなく正常分娩に至ったことから、本技術が妊娠維持に与える影響は小さい(表1)。
4. OPUの卵子回収数は約4個、推定卵胞数からみた回収率は8割と比較的良好である(表2)。
5. 回収卵子の9割を体外成熟・体外受精したところ、媒精2日後には培養卵子の8割が分割し、8日後は2割が移植可能な胚盤胞期胚へ発育する(表3)。
6. 妊娠期の卵胞数は牧場によって差があり、個体差のほかに粗濃比などの栄養管理や産歴等の関連が示唆される(表4

[成果の活用面・留意点]
1. 分娩間隔を延長させることなく妊娠期に胚生産が可能である。
2. IVF技術が安定した施設で行う必要がある。

[具体的データ]
表1 OPU回数と妊娠日齢 表2 妊娠期OPUによる卵子回収成績
表3 妊娠期のOPU-IVF成績  
表4 飼養形態の違いによる卵胞数

(新潟県農業総合研究所)

[その他]
研究課題名:高能力乳牛からの効率的な子牛生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2009〜2012年度
研究担当者:中川邦昭、篠川 温

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