銘柄鑑別可能な系統豚「フジヨーク2」が完成
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[要約] |
産肉形質と管囲を選抜形質とした、大ヨークシャー種の系統造成により、「フジヨーク2」が完成した。この系統に、特徴的なミトコンドリアDNAを全ての維持豚雌が持つようにすることにより、銘柄鑑別が可能となった。 |
[キーワード]豚、大ヨークシャー種、系統造成、ミトコンドリアDNA |

[担当]静岡畜研中小・養豚・養鶏科
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
本県では、大ヨークシャー種系統豚「フジヨーク」と、デュロック種系統豚「フジロック」を利用し、「静岡型銘柄豚」の生産が行われ、年間約3万頭が生産されている。1994年に認定された「フジヨーク」の近交係数が15%以上に上昇することに備え、2004年から、後継大ヨークシャー種の造成を開始した。また、当時、食品表示の偽装等が問題となっており、食品の安全、安心を確保するための、銘柄鑑別システムの確立が望まれていた。そこで、造成と同時に、特徴的なミトコンドリアDNA(mt DNA)を用い銘柄鑑別システムの確立を目指した。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
斉一化したmtDNAは、井手ら(2004)の検出した、塩基番号302番の位置でC→Tの変異があるタイプで、アジア系であり、家畜豚の集団の中では極めて特異的な塩基置換であると考えられている。このmtDNAは、母系遺伝をするので、三元交雑により生産された肉豚でもDNAを分析することにより、種雌豚の特定が可能となる(図1)。 |
2. |
斉一化しようとしたmtDNA を持つ個体を総合育種価の高い個体から選抜した。その割合は、基礎豚で26%、第一世代で44%、第二世代で71%、第三世代で83%、第四世代で100%となった。 |
3. |
選抜形質は、一日平均増体重、背脂肪厚、ロース断面積および前後管囲とし、総合育種価を推定して改良を行った。第三世代で、推定式を改定し、新改良目標を、雄雌平均で、BF:2.5cm、DG:1,000g、EM:35cm2、管囲前肢:16.6cm、管囲後肢:17.5cmとした。第五世代の成績は、雄雌平均で、BF:2.6cm、DG:884g、EM:35cm2、管囲前肢:16.4cm、管囲後肢:17.4cmであった。育種価の推移は表1のとおりである。第五世代において、総合育種価の標準化された選抜差の累積が、雄で1.86、雌で1.61となり、系統造成の認定基準を満たし、「フジヨーク2」として認定された。 |
4. |
総合育種価による選抜の結果、管囲は順調に改良された。また、独立淘汰を行ったことで、つなぎ、蹄の形状も改善され、柔軟性を持ったつなぎと、左右そろい、しっかりした蹄となり、肢蹄の強健な豚が造成された。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
「静岡型銘柄豚」を生産する種豚として2011年1月から県内養豚場に供給している。 |
2. |
大ヨークシャー種のmtDNAを斉一化しているため、「フジヨーク2」を母系とした生産体制でのみ(例:WLD)、トレーサビリティーとして利用できる。 |
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[具体的データ] |
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(知久幹夫)
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[その他] |
研究課題名:特徴ある雌型系統豚の造成
予算区分:県単
研究期間:2004〜2009年度
研究担当者:知久幹夫、柴田昌利、堀内篤
発表論文等:静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター研究報告 第4号
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