飼料中の銅・亜鉛含量と豚ふん中の銅・亜鉛濃度の関係


[要約]
飼料中の銅・亜鉛含量と豚ふん中の銅・亜鉛濃度は、正の直線回帰の関係にあり、ふん中の銅・亜鉛濃度はふんの明度や色度に影響を及ぼし、特に銅濃度の影響は強い。 

[キーワード]豚ふん、銅・亜鉛濃度、色調

[担当]長野畜試・養豚養鶏部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考 

[背景・ねらい]
豚用市販配合飼料(特に子豚用飼料)は、成長促進、飼料効率の改善および下痢防止として、銅・亜鉛が他の家畜用配合飼料と比べて多く添加されおり、飼料に含まれる過剰な銅、亜鉛が豚ふんへ移行し、豚ふん堆肥を土壌に施用することによる重金属の蓄積が懸念される。
  そこで、豚ふん中の銅・亜鉛の排せつ量低減化を図り、豚排せつ物利用や環境保全を促進するため、飼料中の銅・亜鉛含量とふん中濃度、ふん色調との関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 1.三元交雑豚(LWD)を28日齢前後に離乳して単飼で飼育し、35日齢から105日齢まで、日本飼養標準(豚2005年版)および飼料製造業界自主規制値(1998年)をもとに4水準に銅、亜鉛含量を調整したクランブル飼料(表1)を給与した成績である。日本飼養標準における銅、亜鉛の要求量(風乾飼料中)は、体重10〜20kgでCu5mg/kg、Zn80mg/kg、体重30〜50kgでCu4mg/kg、Zn60mg/kg、業界自主規制値(添加上限量)は、体重30kg以下Cu125mg/kg、Zn120mg/kg、体重30〜70kgでCu45mg/kg、Zn55mg/kgである。
2. ふん中の銅・亜鉛濃度は、離乳子豚期52〜55日齢および肥育前期87〜90日齢のふんを部分採取して60℃2日間乾燥したふん4日分を混合、粉砕して、乾式灰化後に原子吸光法により分析した値である。
3. 下痢の発生は、離乳子豚期、肥育前期ともに銅・亜鉛の水準による影響はなく、また、日本飼養標準の要求量を充足していれば、飼料中の銅・亜鉛含量は発育に影響しない(表2)。
4. ふん中の銅・亜鉛濃度は、離乳子豚期、肥育前期ともに水準間に有意な差を認め、飼料中の銅・亜鉛含量との関係で、正の直線回帰式(P<0.01)が得られる(表2図1)。
5. 離乳子豚期46〜55日齢および肥育前期81〜90日齢に分光色差計により測定した生ふんの明度(L*値)、色度(a*値、b*値)は、ふん中銅・亜鉛濃度の増加により低下して、色調は茶色から黒色、暗い方向に変化するが、ふん中の亜鉛濃度に差がなくても明度、色度の低下を認め、ふん中の銅濃度が強く影響することが示唆される(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 環境に配慮して銅・亜鉛含量を抑えた飼料を給与した生産者に、ふん中濃度の推定値および数値によるふんの色調変化を説明できる。
2. 当場と異なる環境においては、下痢の発生に注意が必要である。

[具体的データ]
 

(長野畜試)

[その他]
研究課題名:豚ふん中の重金属低減化技術の確立
予算区分:県単プロジェクト研究
研究期間:2009年度
研究担当者:原 雄一、伊藤達也、山口和彦、西條勝宜

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