籾殻配合換羽飼料の不断給餌は平飼い種鶏の誘導換羽を可能にする


[要約]
粉砕籾殻を配合したふすま主体換羽飼料を20日間不断給餌する誘導換羽法は、繁殖供用期間を過ぎた平飼い種鶏に対して、繁殖性能に悪影響を及ぼさず、換羽処理しない種鶏と比べ約4カ月間産卵率と卵殻質を改善し、種卵適正卵を5%増加させる。

[キーワード]平飼い、種鶏、誘導換羽、粉砕籾殻、ふすま、不断給餌、繁殖性能

[担当]愛知農総試・畜産研究部・家きんグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 我が国では種鶏の多くを海外に依存しているため、高病原性鳥インフルエンザ等の発生によって、種鶏の輸入停止に伴うひなの供給不足が危惧されることから、種鶏の長期利用技術の確立が求められている。さらに、世界的なアニマルウェルフェアの考え方や食の安全に対する社会的ニ−ズの高まりから、絶食法によらない長期飼育技術(誘導換羽法)が望まれる。すでに採卵鶏では、絶食法に替わる誘導換羽法としてふすま40%を粉砕籾殻で代替したふすま主体換羽飼料を不断給餌する方法が有効であることが明らかとなっている。そこで、緊急時の平飼い飼育種鶏に対する絶食によらない方法による長期飼育技術(誘導換羽)を確立するため、繁殖供用期間を経過した64週齢(2010年5月20日)の平飼い飼育の種鶏(白色レグホ−ン雌)に対する粉砕籾殻を40%配合したふすま主体換羽飼料の20日間不断給餌が、繁殖性及び産卵性能に及ぼす影響を調べ有効性を評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 3試験区(@成鶏用飼料を不断給餌する区(無処理区)、A体重が30%減少するまで絶食をする区(絶食区)、B粉砕籾殻を40%配合したふすま主体換羽飼料を20日間不断給餌する区(飽食区))を設け、1試験区雌20羽、雄2羽の3反復とする。
2. 供試飼料(ふすまの40%を粉砕籾殻で代替したふすま主体換羽飼料:ME1.29Mcal/kg)の配合割合(重量%)は、ふすま58.3%、粉砕籾殻38.9%、炭酸カルシウム1.75%、 第3リン酸カルシウム0.7%、食塩0.25%、ビタミンプレミックス0.1%である。
3. 繁殖性能は、飽食区及び絶食区の誘導換羽処理後49日目の対入卵ふ化率が、無処理区に比べ有意に高くなるが、処理後70日目以降では各区差はなく同等である(図1)。
4. 産卵率は、飽食区及び絶食区が無処理区に比べ改善される(図2)。
5. 適正卵率(卵重53〜73g内の種卵を適正卵とした)は、飽食区及び絶食区が82週齢まで無処理区に比べ平均で約5%高くなる(図3)。
6. 卵殻質(卵殻強度)は、飽食区及び絶食区が82週齢まで無処理区に比べ改善される傾向である(図4)。
7. 平飼い飼育の64週齢種鶏に、粉砕籾殻を40%配合したふすま主体換羽飼料を20日間不断給餌する方法は、絶食法同等繁殖性能に悪影響なく、産卵性及び卵殻質を約4カ月間改善するとともに種卵として利用しやすい卵を約5%増加する有効な方法である。

[成果の活用面・留意点]
1. 一般に雄鶏に対する誘導換羽処理は、繁殖性能に悪影響を及ぼす可能性があるため、 処理期間中は雄鶏を別飼いにする。
2. 成鶏用飼料が床に多く残っている場合、それらを鶏が摂取して換羽処理効果が減退す る可能性があるため、換羽処理開始前までに床にこぼした飼料を取り除くようにする。
3. 籾殻の使用については、「飼料として使用する籾米への農薬の使用について」(平成21年4月20日付け農林水産省消費・安全局、生産局四課長通知)に留意する。

[具体的データ]
図1対入卵ふ化率の推移 図2 産卵率の推移(63〜90週齢)
図3 適正卵率の推移 図4 卵殻強度の推移 

(美濃口 直和)

[その他]
研究課題名:種鶏の産卵調整技術の確立
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:美濃口直和、安藤 学、石代正義、近藤 一、内田正起

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