翌日着の宅配便輸送が可能なドライアイスを用いる鶏凍結精液の梱包方法


[要約]
ドライアイスを用いて鶏凍結精液ストローを梱包することにより、融解させることなく凍結精液を保持でき、その精液を用いて人工授精しても液体窒素内に保存した凍結精液区と比較して受精率及びふ化率は低下しない。

[キーワード]鶏、凍結精液、ドライアイス、宅配便、輸送、受精率、ふ化率

[担当]三重畜研・中小家畜研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-2207
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
鶏凍結精液の利用にあたっては、液体窒素を用いて凍結精液を輸送する必要がある。しかしながら、液体窒素を用いる精液輸送には、特別な容器が必要なうえ、その入手や取り扱いが困難な場合もある。そこで、人工授精実施日に合わせた鶏凍結精液の翌日着の宅配便輸送を想定し、メチルアセトアミド急速ストロー法(MA法)により作製した凍結精液をドライアイスを利用して輸送するための梱包方法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 2個のドライアイス(約20cm x15cm x 2.5cm(約1kg強))のうち1個に凹み(約0.5cm x14cm x 0.5cm)を(10本)作り、凍結精液(10本)が入った0.5mlストローを挟み込み、さらに包装紙等で全体を包んだ後、発泡スチロール箱へこの包みを入れることにより、融解させることなく凍結精液を1日程度保持できる(図1)。
2. MA法(メチルアセトアミドの最終濃度9%、表1)で凍結した「八木戸」(三重県原産シャモ)の凍結精液において、上記方法で梱包し、1日保持した後に融解した区(ドライアイス梱包区)と液体窒素タンク内から取り出した直後に融解した区(液体窒素内保存区)を比較した結果、ドライアイス梱包区の活力(50++)は、液体窒素保存区(60++)よりも低いが、受精能力は同等とみなされる。
3. ドライアイス梱包区と液体窒素保存区の凍結精液及び液状精液を白色レグホン(10羽)に人工授精を行い(表1)、15日間にわたり採取した種卵の受精率とふ化率を比較した結果、これら2区では同等な成績が得られている(図2表2)。なお、比較のため、採取後リン酸緩衝液で4倍希釈した精液を直ちに人工授精した区(原精液区)でも同様な試験を実施している。
4. 以上のように、ドライアイスによる梱包を工夫することにより、ドライアイス下での鶏凍結精液を1日保持しても、受精率及びふ化率を低下させず、液体窒素内に保存した凍結精液と遜色ない成績を示すことから、翌日着の宅配便等によるドライアイスを利用した簡易な鶏凍結精液の輸送が可能である。

[成果の活用面・留意点]
 MA法では、品種や系統により、メチルアセトアミドの適正濃度が異なるため、本成果を応用する場合は、事前に6〜9%の範囲内で適正濃度を検討しなければならない。

[具体的データ]
図1 ドライアイス梱包方法(概略)
 

(佐々木健二)

[その他]
研究課題名:東海地域を中心とする希少な遺伝資源鶏の保存及び活用技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:佐々木健二、巽 俊彰、西 康裕、筒井真理子(家改セ岡崎)、田嶋慈恵(家改セ岡崎)、新實竜也(家改セ岡崎)、今井隆雪(家改セ岡崎)

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