遅羽性(K)遺伝子が名古屋種雌の生産形質に及ぼす影響


[要約]
PCR法によって羽性遺伝子型を決定した遅羽性と速羽性の名古屋種雌を用いて生産形質を比較すると、遅羽性(K)遺伝子は名古屋種雌において体重および産卵初期の卵重の増加を抑制する。

[キーワード]体重、卵重、羽性遺伝子型、名古屋種、PCR

[担当]愛知農総試・畜産研究部・家きんグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
名古屋種には遅羽性(K)遺伝子や速羽性(k+)遺伝子を保有する個体が存在することが確認されているため、遅羽性系統と速羽性系統を造成すれば、実用鶏のヒナにおいて羽性による雌雄鑑別が可能となる。しかしながら、K遺伝子は育成期の羽根の伸長に大きな影響を及ぼすことが認められるため、体重や産卵性などの生産形質にも少なからず影響を与えると推察される。そのため、K遺伝子の生産形質への影響を明らかにすることは名古屋種の実用鶏の雌雄鑑別に利用する上で重要である。
  そこで、K遺伝子が名古屋種雌の生産形質に及ぼす影響を明らかにするために、PCR法によって羽性遺伝子型を決定したK/wk+/w の名古屋種雌を用いて、育成期の体重への影響を確認する。さらに、産卵期の生産形質については、羽性遺伝子型の効果をより明確にするため、父親や母親の血縁情報が明らかなK/wk+/wの名古屋種雌を用いて、K遺伝子の影響を調査する。

[成果の内容・特徴]
1. 2〜20週齢時の体重を比較すると、K/w k+/w に比べて軽い(表1)。
2. 250日齢の体重ではK/wk+/wに比べて軽く、羽性遺伝子型間で差がある(表2)。
3. 卵重では産卵開始期の180日齢ではK遺伝子による影響が認められないが、210日齢以降ではK/wk+/w に比べて軽い傾向が認められ、特に、210日齢では差が認められる(表2)。
4. 初産日齢、270日齢の卵殻強度、270日齢の卵殻色L値およびa値にはK遺伝子による顕著な影響が認められないが、卵殻色のb値はK/wk+/w に比べて高く、黄色度が高い傾向がみられる。また、181〜300日齢の産卵率ではK/wk+/wに比べて優れる傾向がみられる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 名古屋種の遅羽性系統を造成する場合には体重と卵重の減少に留意して改良を進める必要がある。
2. 他の鶏種ではK遺伝子の生産形質に及ぼす影響が異なる可能性があるので、事前に調査すべきである。

[具体的データ]
表1 K/wおよびk+/wの名古屋種雌における育成期の体重(g)の推移
表2 名古屋種雌の羽性遺伝子型が各生産形質に及ぼす影響

(中村明弘)

[その他]
研究課題名:卵用名古屋コーチンの卵質改良
予算区分:県単
研究期間:2008〜2012年度
研究担当者:中村明弘、長尾健二、石代正義、近藤一、野田賢治、内田正起、石川明(名古屋大)、神作宜男(麻布大)
発表論文等:中村ら(2010)日本家禽学会誌47(J2):J85-J91

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