中生で耐倒伏性、多収のサイレージ用トウモロコシ新品種「タカネフドウ」


[要約]
「タカネフドウ」は中生のサイレージ用トウモロコシで、ごま葉枯病抵抗性、すす紋病抵抗性および耐倒伏性に優れ、乾物収量は同熟期の既存品種より高い。

[キーワード]トウモロコシ、サイレージ、中生、品種、耐倒伏性、耐病性、飼料作物育種

[担当]長野野菜花き試・畑作育種部・とうもろこし育種指定試験地
[代表連絡先]電話:0263-52-1148 
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地) 
[分類]技術・普及 

[背景・ねらい]
我が国のサイレージ用トウモロコシ栽培では、米国などからの導入品種が多く利用されている。それらは耐倒伏性や耐病性などにおいて必ずしも我が国の環境に適したものばかりでないこと、茎葉消化性などが考慮されていない子実用品種が多いこと、および種子の供給が不安定になりがちであることなどの問題点を抱えている。そこで、関東・東山地域に適応する、中生で耐倒伏性、多収のF1品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「タカネフドウ」は畜産草地研究所育成のデント種自殖系統「Na71」を種子親とし、当場育成のフリント種自殖系統「CHU68」を花粉親とするデント種×フリント種の単交雑一代雑種である。
2. 熟期は「中生」に属する。初期生育に優れ、絹糸抽出期は中晩生の普及品種「KD777」より2日早く、中生の普及品種「32K61」より1日遅い(表1)。
3. ごま葉枯病およびすす紋病抵抗性はいずれも「強」で、「KD777」と同程度で、「32K61」より強い(表1表2)。
4. 耐倒伏性は「強」で、「KD777」および「32K61」よりやや強い(表1図1)。
5. 乾物収量は「KD777」および「32K61」より7〜8%高い。乾雌穂重割合は「KD777」並で「32K61」より低い(表1)。
6. 茎葉の推定TDN(可消化養分総量)含量は「KD777」並で、「32K61」より高い。ホールクロップの推定TDN含量は「KD777」および「32K61」並である(表3)。
7. 採種量は雌雄畦比3:1で55kg/aが見込まれる。粒型は「丸」〜「やや丸」である。種子親の絹糸抽出期は花粉親の開花期より2日程度早く、採種栽培では両親を同日播種することができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 適応地域は関東・東山地域における、生育期間に1,200℃以上の有効積算温度*を確保できる地域。(*:日平均気温が10.1℃以上の時、(日平均気温−10℃)の積算値)
2. 春播き用の一般の栽培基準に準ずる。下葉の枯上りがやや早いので、雌穂の登熟を確認し、黄熟期収穫に努める。
3. 種子は2012年以降に販売される見込みである。

[具体的データ]
表1.「タカネフドウ」の関東・東山地域における主要形質
表2.「タカネフドウ」のごま葉枯病およびすす紋病抵抗性特性検定試験成績
表3.「タカネフドウ」の推定TDN含量 図1.「タカネフドウ」の倒伏程度 

(長野県野菜花き試験場)

[その他]
研究課題名:寒冷地・温暖地東部向け耐倒伏性、病害抵抗性、サイレージ用、多収のとうもろこし品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:2003〜2009年度
研究担当者:三木一嘉、江原靖博、矢ケ崎和弘、袖山栄次、澤野 史、佐藤 尚(畜産草地研)

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