スィートソルガムの糖生産力評価法および中部高冷地における多収品種


[要約]
スィートソルガムの茎葉部の糖収量と茎の糖収量との間には高い正の相関があり、茎葉部の糖収量から茎の糖収量を推定できる。この推定法により糖生産力を評価した結果、「SG-1A」および「KCS105」の糖収量が中部高冷地で高い。

[キーワード]スィートソルガム、糖収量、評価法

[担当]長野畜試・飼料環境部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]研究・普及

[背景・ねらい]
長野県の耕作放棄地面積は17,094ha(農地全体に占める割合は17.5%)で全国的にも多く(2005年農林業センサス)、耕作放棄地を利用したエタノール生産用のソルガム栽培が注目されている。茎に糖を蓄積するタイプであるスィートソルガムは搾汁残渣をエタノール生産工程における燃料として利用でき、余剰分を家畜の飼料としても利用できることから資源作物としての期待が大きい。バイオマスの利活用に関する行政施策に資するため、スィートソルガムの糖生産力評価法を検討し、中部高冷地(標高600〜1,000m)における糖収量を調査する。

[成果の内容・特徴]
1. スィートソルガムの葉の糖収量と茎の糖収量との間には高い正の相関(r=0.879,p<0.01,n=84)があり、葉の糖収量は茎の糖収量の9分の1程度である(図1)。そのため、茎葉部の糖収量と茎の糖収量との間にも高い正の相関(r=0.998,p<0.01,n=84)があり、茎葉部の糖収量から茎の糖収量を推定することができる(図2)。
  茎の糖収量=0.8965×茎葉部の糖収量+4.89
 すなわち、
  茎の糖収量=0.8965×茎葉部の単少糖含量×茎葉部乾物重/100+4.89 (表1
2. 茎葉部の単少糖含量と茎葉部の乾物重から茎の糖収量を推定する本手法は脱葉する必要がないこと、試料の糖含量が葉部によって希釈されるため粉砕しやすいこと等の利点があり、従来法よりも多検体の調査に適している(表1)。
3. 標高600〜1,000m地帯では、スィートソルガム品種「SG-1A」および「KCS105」の糖収量が安定して高く、なかでも「SG-1A」は2カ年3地域の平均で595kg/10aであり、エタノールの発酵収率を85%とする(岩手県醸造食品試験場報告24.31〜34p.1990年)と、エタノール生産量は328L/10aと試算される(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 茎葉部の糖収量から茎の糖収量を評価する本手法は、飼料作物系統適応性検定試験実施要領に基づいて調査した試料を用いることができる。
2. 糖収量の計算は、製糖工場におけるサトウキビの搾汁行程と同様の方法でソルガムの搾汁を行った場合、茎中の単少糖類のほぼ全量が抽出されると仮定している。

[具体的データ]

(長野畜試)

[その他]
研究課題名:バイオマスエネルギー資源としてのソルガム地域適応性の評価
予算区分:県単
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:浅井貴之、矢口直樹、有野陽子、清沢敦志、後藤和美、太田俊明

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