種・属間雑種牧草における硝酸態窒素の蓄積特性
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[要約] |
交雑種牧草(ハイブリッドライグラス、フェストロリウム)はイタリアンライグラスと異なる硝酸態窒素の蓄積特性を示す。硝酸態窒素濃度の立毛評価にあたっては、イタリアンライグラスの葉色診断の適用はできず、硝酸態窒素分析などが必要となる。 |
[キーワード]硝酸態窒素、ハイブリッドライグラス、フェストロリウム、水稲用葉色スケール |

[担当]静岡畜技研・飼料環境科
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]研究・参考 |
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[背景・ねらい] |
飼料作物中に高濃度で蓄積した硝酸態窒素は反すう家畜の硝酸塩中毒の原因となる。飼料作物の生育に必要な窒素はしばしば多量に施用され硝酸態窒素の蓄積を引き起こすことから、飼料作物中の硝酸態窒素含量の低減技術と簡易診断技術が求められており、イタリアンライグラスでは葉緑素計を用いた立毛評価方法が開発されている。そこで、今後普及が期待されるハイブリッドライグラスやフェストロリウムなどの交雑種牧草について、硝酸態窒素の蓄積特性と、葉緑素計や安価な水稲用葉色スケールを用いた硝酸態窒素濃度の評価の可能性を検討する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
イタリアンライグラス「タチワセ」は窒素施用量を増加させるとともに硝酸態窒素濃度が上昇するが、交雑種牧草では収量を増加させるが、硝酸態窒素濃度は明確に上昇せず、イタリアンライグラスと異なる硝酸態窒素の蓄積特性を示す(図1)。 |
2. |
イタリアンライグラスでは、葉緑素計の指示値(SPAD値)、葉色スケールの標準色素票値(C.S.値)と硝酸態窒素濃度間では有意な相関関係が認められるが、交雑種牧草3品種ではSPAD値及びC.S.値と硝酸態窒素濃度との相関が低く、イタリアンライグラスとの違いがみられる(表1)。 |
3. |
フェストロリウム「バーフェスト」、ハイブリッドライグラス「テトリライトU」では、SPAD値と水稲用葉色スケールのC.S.値に有意な相関が見られ、イタリアンライグラスにおいて硝酸態窒素濃度の基準値0.2%DMを上回るか否かの診断基準とされるSPAD値47に相当するC.S.値は7であるが(図2)、C.S.値が7を示す場合でも硝酸態窒素濃度は必ずしも高くならない(図3)。 |
4. |
ハイブリッドライグラス「ハイフローラ」の場合、SPAD値とC.S.値は関係が弱い(図2)。 |
5. |
以上から、交雑種牧草はロリウム属の遺伝形質を有するが、その硝酸態窒素の蓄積特性はイタリアンライグラスとは異なるため、硝酸態窒素濃度の診断に際してはイタリアンライグラスで開発された硝酸中毒を回避するためのSPAD値基準の適用をさけ、硝酸態窒素分析などによる診断が必要となる。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
寒地型の種・属間雑種牧草の硝酸態窒素濃度を診断する際の参考となる。 |
2. |
「バーフェスト」、「テトリライトU」では別の標準色素票を利用した検討も考えられる。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:硝酸態窒素が蓄積しにくい飼料作物の選定と簡易診断法の検討
予算区分:県単
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:古屋雅司、稲垣敦之、片山信也、佐藤克昭、笠井幸治
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