硝化能力の高い土壌から分離した微生物群はアンモニア臭気を抑制する


[要約]
硝化能力の高い土壌を木質資材に混合した敷料や、該当土壌より分離した微生物培養液を同資材に混合した敷料は、ゼオライト混合敷料より豚舎房内のアンモニア発生を抑制する能力が高い。土壌分離菌は簡易に培養が可能で、アンモニア抑制効果もみられる。

[キーワード]臭気抑制、アンモニア、硝化菌

[担当]福井畜試・家畜研究部・資源活用研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
畜舎や堆肥舎の構造は多くが開放型であり、臭気捕集による脱臭は困難な場合が多い。そこで、室内試験で硝化能力が高かった土壌(以下草地土壌)に着目し、土壌微生物の臭気分解能を明らかにすることで畜舎内における簡易臭気抑制技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 床面積10m2の独立豚房2か所に約100日齢肥育豚3頭ずつを飼養し、草地土壌と木質資材(試験区)、ゼオライトと木質資材(対照区)をそれぞれ容積比1:2で混合し敷料として43日間飼養する。試験期間中週3回、房内5か所に75Lコンテナを60分間伏せ、コンテナ内に発生するアンモニアを捕集測定する。期間中の平均発生アンモニア濃度は草地土壌区で27.3ppm、ゼオライト区で49.0ppmであり、草地土壌区の発生アンモニア濃度は有意(P<0.05 t検定)に低下する(図1)。試験後の敷料内硝酸態N量は草地土壌区がゼオライト区の11倍となるが、草地土壌区の敷料内硝化菌数は減少する(表1)。
2. 同じ豚房と供試豚を用い、草地土壌より釣菌した硝化能力がみられる菌(以下土壌分離菌)数株を混合し硝化菌培地で27℃14日間培養した液500ml(生菌数1.4×102個/ml)を木質資材210Lに混合した区と、菌無添加の木質資材のみ210Lを敷料とした区に分け38日間飼養する。試験1と同方法で発生アンモニアを測定する。期間中の平均発生アンモニア濃度は菌添加区で18.8ppm、菌無添加区で36.8ppmであり、菌添加区の発生アンモニア濃度が有意(P<0.05 t検定)に低下する(図1)。試験後の敷料内硝酸態N量は菌添加区が菌無添加区の4倍となり、菌添加区の敷料内硝化菌生菌数は増加する(表1)。
3. 豚舎汚水を滅菌区と未滅菌区に分け、それぞれをアンモニア酸化細菌ゲルライト平板培地で7日間培養した土壌分離菌1株を添加した区(菌添加区)と、添加しない区(菌無添加区)に分けた後、28℃、28日間静置培養し、発生アンモニア濃度、アンモニア態N、硝酸態Nを測定する。滅菌汚水と未滅菌汚水における容器内アンモニア濃度は、菌添加により半減する傾向にある(図2)。アンモニア態Nは土壌分離菌添加により減少する傾向にある。硝酸態Nは滅菌汚水において差はみられず、未滅菌汚水の菌添加区では著しい増加がみられる(表2)。使用した土壌分離菌は普通寒天培地(ニッスイ)にも生育できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 2008〜2009年度に小型堆肥化装置で複数土壌の臭気抑制試験を行い、福井畜産試験場草地土壌に高い臭気抑制と硝化能力が見られたことから豚房敷料に使用する試験を行った。硝化能力が高い土壌を敷料に混合することで、畜舎内の臭気抑制効果が期待できる。
2. 硝化能力が高い土壌より分離した菌群を混合することで、土壌混合と同程度の結果が得られ、作業の軽減も期待できる。
3. 土壌を敷料として利用する際、寄生虫が発生する可能性があるので注意する。

[具体的データ]

(南部奈津紀)

[その他]
研究課題名:土着微生物活用による臭気抑制技術の開発
予算区分:国補(地域科学技術振興研究事業)
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:南部奈津紀、笹木教隆

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