バイオマス有効利用のための有機物分解特性の指標化


[要約]
酸性デタージェント可溶有機物と酸性デタージェントリグニンを測定することにより様々な有機物の分解特性を評価することができる。それぞれ、易分解性有機物、難分解性有機物の指標になる。

[キーワード]酸性デタージェント可溶有機物、酸性デタージェントリグニン、分解特性、易分解性有機物、難分解性有機物

[担当]新潟農総研・畜産研・生産・環境科
[代表連絡先]電話:0256-46-3103
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]研究・普及

[背景・ねらい]
畜産をとりまくバイオマス資源や有機質資材等の有機物を利用するにあたっては、有機物としての性質すなわち分解特性を考慮することが重要である。そこで、分解特性を迅速に評価できるように、易分解性有機物と難分解性有機物の指標を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 酸性デタージェント可溶有機物(以下、AD可溶有機物)と土壌中における14日間炭素分解量(易分解性有機物)は高い相関関係を示すことから、AD可溶有機物は易分解性有機物の指標となる。ただし、回帰式は原点を通らないので等量の関係ではなく、AD可溶有機物が200mg/gDM未満のものは易分解性有機物がほぼゼロと評価できる(図1図2)。
2. AD可溶-C(AD可溶有機物として含まれる炭素)と土壌中における3ヵ月間炭素分解量はほぼ一致することから、AD可溶有機物は易分解性有機物と比較的分解されやすい有機物より構成されると考えられる(図1図3)。
3. ADL-C(酸性デタージェントリグニンとして含まれる炭素)と難分解性有機物(3年間炭素残存量)はほぼ等量の関係にあり、酸性デタージェントリグニンは難分解性有機物の指標となる(図1図4)。
4. AD可溶有機物と酸性デタージェントリグニン以外の有機物(セルロースに相当)は、3ヵ月〜3年の間に分解される比較的分解されにくい有機物であると考えられる(図1)。
5. 各指標値の測定は飼料分析の手法を用いる。AD可溶有機物は、1000−ADFom(mg/gDM)−粗灰分(mg/gDM)で求める。

[成果の活用面・留意点]
1. .バイオマス資源や堆肥など様々な有機物の分解特性を統一的に評価し、利用方法を検討する指標として活用できる。また、牛ふん堆肥と豚ぷん堆肥はAD可溶有機物測定により窒素肥効パターンが推定できる。
2. 14日間炭素分解量は培養法、3ヵ月間炭素分解量および3年間炭素残存量はガラス繊維濾紙法で測定した数値である。

[具体的データ]

(新潟県農業総合研究所)

[その他]
研究課題名:バイオマス有効利用のための成分評価
      農業環境規範に適合する家畜ふん堆肥の肥効評価システムの確立
予算区分:県単、実用技術
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:小柳 渉
発表論文等:小柳ら(2010)土肥誌、81(4):383-386

目次へ戻る